著作権法の本質は「守ること」と「広めること」

町田 ここ10数年でSNSの普及やAIの発達など環境が劇的に変わって、誰もが著作権法の知識を必要とする時代に突入しましたよね。誰もが著作権の主体だし、反対に他者の著作権を侵害してしまう恐れもある。

橋本 そうですね。SNSでの発信やAIの活用が当たり前になったのに、おさえておくべき著作権法の知識は追いついていないと感じます。たとえば、ネットに落ちている写真や、録画したテレビ番組を無断で載せていたりと、SNS上には著作権上アウトと思われる画像や記事があふれています。でも、たいていは悪意があるわけではなく、何気なくやってしまっている。

私はとくに演奏家など、アートの実践者の方々に興味をもってほしくて、著作権についてのコラムを書いているのですが、そのコラムをSNSで紹介してくださっている方が気づかぬうちに著作権に抵触されていた、なんていうことも……。もっとわかりやすく伝えることが必要だと、自分の力不足を感じています。

アーティストにとって、知らないうちにトラブルに巻き込まれて被害者や加害者になってしまうと、創作や演奏へのモチベーションが著しく下がってしまう。そのような事態を避けるために、ぜひ著作権のことを知ってほしいと思っています。

町田 クリエイターや実演家のビジネスがなぜ成り立っているかというと、著作権法があるからです。クリエイターや実演家が著作権法を学ぶことでビジネスを広げられたり、創作の対価としてのお金をより効率的に稼ぐことができるようになるかもしれない。当事者自身が声を上げることはとても大切だと思います。

橋本 著作権は著作物を財産として守る「財産権」であり、クリエイターが生きていくために不可欠な権利だけれど、そこが認識されていない気がします。