ところで今回のウィーン・フィルの来日は、ひとつの大きな節目でもある。サントリーホールは1999年よりウィーン・フィルを招聘し「ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン」を開催してきたが、今年2023年はちょうど20回目となる。
この継続は、単なるコンサート興行だけにはとどまらない、未来の世代へ最高の音楽を体験し学んでもらうための、教育的要素の強い催しにもなっている。
今回も例年同様「無料公開リハーサル」「ウィーン・フィル奏者による公開マスタークラス」「青少年プログラム」が開催される。25歳までの青少年を対象としたユース席(11月12日公演限定、申し込みは終了)も、新たに設定された。
たとえば無料公開リハーサルについて、フロシャウアーはこう述べている。
フロシャウアー「公開リハーサルとは、観客との交流といってもよいでしょう。サントリーホールでウィーン・フィルが演奏する曲はすべて、過去に演奏されたものです。練習を重ね、観客の前で演奏したことのある曲ばかりです。学びはじめの曲を披露するのではありません。すでに完成形に近い状態でお見せする、最高レベルのリハーサルです。
それでも指揮者は、『いや、これでは音が大きすぎだ』とか、『ここはもう少しゆっくりやってみようか』などと言ったり、音響を微調整することすらあります。ホールが違うと、音も違って聞こえるので、こうした時間は個人的にとても胸躍ります。それを会場の皆さんと生で共有できることは、私たちにとってもまたとない体験になります。
リハーサルだからといって、気を抜くことは決してありません。むしろ、全力を尽くす場だと捉えています」