ウィーン・フィルも地元で青少年プログラム「パスワード・クラシック」を行なっています

ウィーンでは日頃、こうした教育活動はどのように行なわれているのだろうか。

フロシャウアー「ウィーンでも青少年に向けたいくつかのプログラムを行なっています。たとえば『パスワード・クラシック』という企画では、まず私たちが学校へ行って子どもたちのために演奏し、あるレパートリーを子どもたちと一緒に学んで準備をし、最後には子どもたちがわれわれのリハーサルをコンツェルトハウスまで聴きにくる。これはクラシック音楽に馴染みのない生徒たちにとても人気のあるプログラムで、年に2回おこなっています。

この取り組みでは、もっとも有名なクラシック作品の一部と民謡やジャズとのつながりを示すことから始めます。そうすればクラシック音楽がより近づきやすいものになり、怖がらなくてもよい楽しいものだと感じられるようになる。

たとえば楽団員がクラリネットやトランペットである民謡の旋律を吹きます。それからオーケストラ全体で、その民謡によってできているマーラーの「交響曲第1番」の関連部分を演奏する。そうすると子どもたちは驚き、興味をもちます。

ジャズでも同じようなことができます。シューベルトのレントラーがブルックナーの交響曲と密接な関係があることを示すことも可能です。このように、クラシックは近づきがたい音楽というわけではなく、民謡や伝統音楽とつながっていることを伝えるのです」

「ウィーン・フィル奏者による公開マスタークラス」は、講師が受講生にマンツーマンで指導を行ない、その技術や伝統を惜しみなく伝える。聴講も可能で、レッスンを間近で体験することで、自身の演奏活動に生かしたり、ウィーン・フィルをさらに深く知ることができる(写真は「ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン2021」における、ウィーン・フィル コンサートマスターのフォルクハルト・シュトイデによるマスタークラスの様子)©SUNTORY HALL

ちなみにウィーン・フィルは、最近「Apple Music Classical」と新しくコラボレーションを始めており、年に10回の定期演奏会のうち6回をストリーミングできるように提供しているという。ふだんポピュラー音楽を聴いている青少年がクラシック音楽に出会うために、スマホでも機会を作りたいとのことである。