ウクライナで起きている戦争について尋ねると、フロシャウアーは次のように話してくれた。
フロシャウアー「悲劇ですね。このことについて表現する言葉を見つけるのは難しい。もちろんアーティストたちは悲しんでいます。今起きている最悪な状況を決して忘れてはならない。
私たちはロシアへの演奏旅行が大好きでした。なぜならロシアの聴衆は日本と同じように我々を高く評価し、愛してくれているからです。このことすべてには敗者しかおらず、勝者はいません。
忘れてはならないのは、チャイコフスキーも戦争を経験したということです。ショスタコーヴィチの音楽にもその苦悩が込められています。ベートーヴェンの時代には、ウィーンが2回フランスに占領されました。これらの悲劇のすべてをわたしたちは音楽の中に聴くことができます。言葉を使わずにこれらを批判することができるという点で、音楽は偉大です。
ザルツブルク音楽祭の今年のモットーは『今の世の中はたがが外れている(Die Zeit ist aus den Fugen)』で、これはシェイクスピアの『ハムレット』に出てくる台詞(The time is out of joint)からとられています。
音楽祭では《フィガロの結婚》も上演されましたが、このオペラでは、はじめ権力をふるっていた人物が最後には謝り、権力の限界を示す。この作品は今の時代を考えるのにふさわしい作品だと私は思います。このオペラによって、言葉による批判ではなく、より洗練された方法でメッセージを伝えられたと思います」
ウィーン・フィルの伝統については、フロシャウアーはこう語っている。
フロシャウアー「私たちには、先人から受け継いだ伝統を、次世代の音楽家たちに紡いでいく責任があります。ベートーヴェン監修のもと『交響曲第9番』を、ウィーン・フィルの創設メンバーが演奏したということを誇りに思っています。これこそが私たちのDNAであり、当時のメンバーの演奏が、今日も伝統として我々に受け継がれているのです」
ウィーン・フィルは1842年、作曲家・指揮者のオットー・ニコライ(1810-49)の呼びかけにより創立されているが、そのときの結成メンバーには、ベートーヴェンの第9交響曲初演(1824年、来年が200周年)に参加していた演奏家たちが含まれていた。人類の平和と共存を訴えるこの記念碑的作品の成立がウィーン・フィルのルーツとなっていることは、楽団員がとりわけ強く意識していることである。
震災やコロナ禍といった試練を経ても粘り強く開催されてきた「ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン」が、これからの時代も、ずっと続いていくことを願わずにはいられない。
こちらの公演は終了しました。
トゥガン・ソヒエフ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
【オーケストラ公演(大ホール)】
※10月14日(土)10時より関係者席開放等による二次発売が開始!
■11月12日(日)16:00開演
R. シュトラウス:交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》Op.30
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.68
■11月14日(火)19:00開演
サン゠サーンス:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 Op.22(ピアノ:ラン・ラン)
プロコフィエフ:交響曲第5番 変ロ長調 Op.100
■11月18日(土)16:00開演
ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調 Op.60
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.68
■11月19日(日)16:00開演
R. シュトラウス:交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》Op.30
ドヴォルジャーク:交響曲第8番 ト長調 Op.88(B 163)
【無料公開リハーサル】
■11月12日(日)大ホール
※事前申し込みは終了
【ウィーン・フィル奏者による公開マスタークラス トランペット】
■11月16日(木)19:00開始 ブルーローズ(小ホール)
講師:シュテファン・ハイメル
※チケット発売中
【サントリーホール&ウィーン・フィルの 青少年プログラム】
■11月17日(金)11:00開演 大ホール
※中高生対象、学校単位での事前申し込み要
【他都市公演】
名古屋公演
11月10日(金) 18:45開演
愛知県芸術劇場コンサートホール
ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調 Op.60
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.68
大阪公演
11月11日(土) 15:00開演
フェスティバルホール
サン゠サーンス:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 Op.22(ピアノ:ラン・ラン)
ドヴォルジャーク:交響曲第8番 ト長調 Op.88(B 163)
横浜公演
11月15日(水) 19:00開演
横浜みなとみらいホール大ホール
サン゠サーンス:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 Op.22(ピアノ:ラン・ラン)
ドヴォルジャーク:交響曲第8番 ト長調 Op.88(B 163)