「全然辛くないって言われたのに辛い!! でもおいしい」とガジェヴさん。サモサは、ジャガイモや豆類をスパイスで味付けした具を三角錐の形に皮でつつみ、油でサクッと揚げたもの。オーケストラメンバーの分も用意されていました。
そして迎えた本番当日。ベートーヴェン「レオノーレ序曲」第3番で幕を明けます。オーケストラからメータさんと共演できる喜びが溢れるようです。
そしてガジェヴさんが登場。彼らしい、あたたかく輝くピアノの音が響きます。
オーケストラはしっかりとした足取りで進んでいくような演奏で、その分、ガジェヴさんの自由にたっぷり歌うピアノが映えます。
2楽章などインドの濃密な雰囲気がそうさせるのか、これでもかとロマンティックにゆっくり歌うガジェヴさん。メータさんはそれを優しく追いかけるようにピタリとオーケストラをつけていました。
そしてギリギリを攻めるガジェヴ節はインドでも健在、エネルギッシュな終楽章。盛大な拍手で呼び戻され、アンコールには「英雄ポロネーズ」を披露しました。
休憩中、バックステージでガジェヴさんと話していると、スタッフがやってきて「アレックス、マエストロが呼んでいます!!」。
マエストロの部屋を覗いてみると、2人はこの笑顔。
ガジェヴさんは、他にどんなコンチェルトのレパートリーがあるのかを聞かれたそうなので、再共演に期待できそうです。
そして後半はドヴォルザークの交響曲第7番。オーケストラのメンバーたちからは、メータさんのタクトに全力で反応している気配が伝わってきます。正直、これまで聴いたSOIとはまったく別の印象がありました。
特別なマエストロというのは、その存在だけでオーケストラを変え、新たな生命を与えるものなのだと改めて感じます。聴衆は、盛大な手拍子で祖国の英雄メータさんを見送っていました。