ミミは名もなきグリゼットだが、マリーは愛人&娼婦街道を歩んだグリゼットの最高峰である。大貴族から作家、音楽家といった芸術家まで多くの名士に愛され、ありとあらゆる贅沢を享受したグリゼット上がりの娼婦など他にいない。
当時のパリでは、大革命後の王政復古と7月革命、7月王政を経て、大革命で追放されていた貴族たちが復権し、同時に銀行家といった新興の資産家たちが、有り余る富を愛人に注ぎ込んでいた。
もともとフランスには、国王が正式な妃とは別に「公式の寵姫」を持てるなど婚外恋愛に寛容な風土があり、19世紀の富裕層がかつての宮廷の習俗を真似したということもできる。