マリーが心底憧れた男性、フランツ・リスト

マリーが心の底から憧れた男性は、当時人気ピアニストとして世間を熱狂させていたフランツ・リストである。その手の女性には興味がないと公言していたリストだったが、マリーの美貌と会話術には抗えなかった。しかしもっと熱を上げたのはマリーだった。彼女はおそらく生まれて初めて、男性に添い遂げることを夢見る。だが宮廷音楽家であるリストが娼婦を連れ歩くわけには行かなかった。

マリーは奇策に出る。自分の崇拝者であるペレゴー伯爵と結婚し、「伯爵夫人」の称号を手に入れたのである。これなら、リストに恥じないだろうという目論見だった。しかしパリを離れたリストからの招きはなく、当然ながらペレゴーの激怒を買い、病も悪化。 訪問者も激減した。23年の生涯を閉じたのは、その1年ほど後だった。

マリー・デュプレシ(カミーユ・ロクプラン画)