「身分違い」の結婚だった。父ロレンツォは公爵に叙せられていたが、メディチ家は新興の商人。相手は14世紀前半から続く名門で、フランス王を輩出しているヴァロワ家の王子である。
カトリーヌとの結婚は、イタリアとの戦争で財政難に陥っていたフランスを救うためでもあった。
黄金づくめの衣装をまとい、34日間の祝宴を経てフランス宮廷に入ったカトリーヌを待っていたのは、「お店屋さんの娘」という陰口だった。
しかも頼りのクレメンス7世は、結婚の翌年に急死してしまう。後継者のパウルス3世は約束した持参金を反故にし、カトリーヌは宮廷で孤立した。
夫婦生活も悲惨だった。夫のアンリは18歳年上のディアーヌ・ド・ポワティエに夢中。当然、子どももできない。