オーケストラもカルテットを応援してくれる

――これまで学生時代に結成された優秀な室内楽団体をたくさん見てきましたが、卒業したその先の生活と室内楽との両立は、若い演奏家にとっては常に大きなテーマです。ほのカルテットもオーケストラと兼業の人が多いですが、そのあたりのバランスは?

蟹江 僕はもう、2018年の1月から、東京交響楽団に入団していて、入団とカルテットの結成が同じ時期なんです。だから、両立することを常に考えながら、学生生活の残りを過ごしていました。

卒業間近になったときは、これまでは学生の勢いがあるからやってこられたけど、社会に出た時にどうやったら両方ともちゃんとやっていけるのか。たしかに結構考えなきゃいけないポイントでした。

両立は本当に難しいです。僕は要領が悪いタイプなので、オケに集中しちゃうとカルテットがおろそかになるし、カルテットに集中しちゃうと、自分の所属している本職のオケがないがしろになってしまいそうっていうジレンマがありました。

一時期、カルテットはカルテット、オケはオケでと考えていたんですけど、そうじゃなくて、カルテットでやったことをオケに循環する。またオケでやったことをカルテットに循環する。そういうサイクルを作り始めてから、ちょっと見えるものがあったりもしています。

チェロ:蟹江慶行(かにえ・よしゆき)
[メンバーから一言]いちばん真面目かな(岸本)想像してダメだなと思うことでも、1回は試してみようと言って、カルテットに変化をもたらしてくれる(林)

――やっぱりオーケストラは忙しいですか。

蟹江 そうですね。自分の所属している東京交響楽団は、けっこう公演数が多いオーケストラなので。でも、コンクールがあるっていうことを事前に話して、スケジュールは調整してもらうようにしています。事務局の方もそれはぜひ頑張ってほしいと。オーケストラとしても、結構ほのカルテットを応援してくださっている方が多くて。