――室内楽で成功することがオーケストラにとってもプラスになると考えて、オーケストラの事務局が協力してくれるっていうのは、いいですね。岸本さんも、読売日本交響楽団に所属されていますよね。室内楽との兼ね合いは?
岸本 読響は、本当に個人のエネルギーがすごく強くて、みんなの「こう弾きたい!」というのが溢れている感じなので、それを自分も浴びつつ、一つのアイデアにしながら、演奏することによって、耳がどんどん開いていく感覚にもなり、自分の視野が広くなっていくのを、この3年か4年ぐらいで感じているんです。それをカルテットにも活かしていけたらいいなと思っています。
読響は特にマニアックな曲が多いし、指揮者も個性的な人が多いので、要求されることのレベルがすごく高い。読響に入ってよかったなって思うのは、指揮者の要求が強いからこそ、自分たちのやりたいことも抑えずに済む。指揮者がこうやってほしいということに対して、こっちも答えるっていうスタンスの関係性でいられるのが、すごくいいなと思っています。
指揮者の言いなりって言ったら失礼ですけど、オケをやっていると、だんだん自分の意思が弱まっていくというのを、自分がオケに入る前に、いろんな方面から聞いてたので。
――それは読響がいいオーケストラだってことですね。あとは、常任指揮者のセバスティアン・ヴァイグレが良かったのでは。
岸本 本当に素晴らしい。自然に歌わせてくれる感じとか、すごく大きく鳴らしたいところとかも、絶対どこかに冷静さを持っています。彼はギャーンって鳴らすのは嫌いなんで、とにかくこう、下からぶわーって持ち上げる感じで、汚い音にならない。そういった面では、本当にたくさんいい刺激をもらっています。
――ほのカルテットと読響のバランスは、自分の中でどうですか。
岸本 最初の頃は、オケを弾いた後にカルテットで合わせるときは、ちょっと弾き方を変えなきゃとか思ってたんですけど。でも、いまではもう、逆にオケで自分のやりたいことを発散して、カルテットでも同じようにやりたいことを発散しています。(全員笑)
――オーケストラって、前後左右から音が聞こえてくる世界じゃないですか。先輩もいれば、自分より若い人もいる、いろんな人たちの集合体ですよね。そういう場所と、このカルテットとの、いい相互関係は、自分の中で、作れそうですか。
岸本 なかなか難しいですね。でも、カルテットは指揮者がいないので、私たちの演奏の意思が、もっとも大事になってきます。4人で弾く時は相当なエネルギーを使うし、オーケストラで弾いている時よりも、より神経を常に集中させて、研ぎ澄まされた耳にずっとしておかなきゃいけない。本当に大変なアンサンブルをしてるなって思います。