公演の第1プログラム(6/19)で演奏されるハイドンの「トリオ ト長調 Hob. XV: 15」、シューマンの「幻想小曲集 作品73」のように、もともと鍵盤楽器のために書かれたパートを、マゲンはしばしばそのままハープで演奏する。
マゲン「ハイドンのような作品の鍵盤楽器のパートは、現代ピアノより音が小さく、クリアだった楽器のために書かれています。現代ピアノは大きなレゾナンス(響き)をもっているので、ときに他の楽器とのバランス、明晰さの問題が生じることがあります。
ピアノのようなメカニズム、ダンパーはハープにはないため、ハーピストは自分でレゾナンスを調節する必要がありますが、そのためにハープはもっとレゾナンスをコントロールすることが可能です。
奏者が直接弦に触れることができるハープには、ピアノ以上に多彩な音色の可能性があります。ピアノよりハープの方が優れているということではなく、ハープは異なるカラー、異なる透明性を音楽にもたらしてくれるということです。
ハープにはまた、ハーモニクス(弦の半分あたりを押さえることで、あたかも弦の長さが短くなったような状態にして、高い音を出す奏法)やペダルによるさまざまな効果があります。とくに色彩の幅広さと表現力の高さが組み合わさる点において、ハープは際立った存在だと思います」
ちなみに筆者はICPによるシューマンの「幻想小曲集」をこの2月、ニューヨークで聴くことができた。ティビ・ツァイガーのふくよかで柔軟なクラリネットと、マゲンの輝きに溢れた緊張感ある演奏は、間違いなくこの日のハイライトの一つだった。