建物の中を撮るときは、持ち主が決めたルールに従う

――例えば、オペラハウスやコンサートホールの外観の写真を撮って自分のブログに載せるのは、OKですよね?

ええ、OKです。

――じゃあ、中に一歩入って、ロビー、それから劇場の内装、客席の様子、それを撮ってSNSに載せるのは、それも景観の一種ということでセーフですか?

オペラハウスのレベルになると、内部に美術品レベルの装飾もあるかもしれません。著作物なのかどうかの判断が難しいものもあると思います。

――最近は、劇場でもここでは写真に撮ってSNSに上げてもいいですよと、それを推奨している場所や機会が設けられていることも多いです。そういうシチュエーションを選んだほうがいいのでしょうね。世界遺産になっているような、かなり古いお寺の中の仏像の写真を無断で撮ってSNSに上げるのは?

世界遺産レベルの古いものは保護期間が満了しているので、著作権法的にはセーフです。

――古いから大丈夫ってことですか。

そういうことになりますね。ただ問題は、施設管理権という著作権法とは別の権利があって、その施設を所有している人たちが、その施設の使用方法を決められるんですよ。

――そこで禁止することは可能なんですね。

そうですね。ですから、例えば入口に「撮影禁止」と大きく書いてあった場合は、入場の際にそれに同意したのに、撮影してSNSにアップしたことになり、トラブルに発展する可能性はあります。

ちなみにミュンヘンのバイエルン国立歌劇場には、各フロアにauditorium内は撮影禁止と書いてありました。肖像や舞台装飾などの著作物に配慮したためかなと思います。私はもちろん内部で撮影しなかったですが、撮影禁止と書かれたプレートの文字を撮影するかを激しく悩み、安全を期してやめました(笑)。

著作権法の効果には差し止めの権利があり、違法にアップされた動画や写真の削除を求めることができます。

施設管利権はそこまで強い権利ではないと考えられていますが、第三者がもっている建物に入る際にはそのルールに従うべき場合があることは、覚えておいた方がいいと思います。

橋本阿友子(弁護士・骨董通り法律事務所)
京都大学法学部卒業、京都大学法科大学院修了。ベーカー&マッケンジー法律事務所を経て、2017年3月より骨董通り法律事務所に加入。東京藝術大学・利益相反アドバイザー、神戸大学大学院非常勤講師、Chordia Therapeutics株式会社社外監査役。上野学園大学では非常勤講師を務める傍ら、器楽コース(ピアノ専攻)に編入し、2022年3月には芸術学士を取得。国内外のコンクール受賞歴を持つ。自身の音楽経験を活かし、音楽著作権を専門としつつ、幅広いリーガルアドバイスを提供している。
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