ベルリン・フィルの音楽の推進力 音が押し寄せる力

——ライブ中継の休憩時間に配信された、第1ヴァイオリンの町田琴和さんとの対談でもおっしゃっていましたが、リハーサルでの雰囲気は良かったそうですね。

山田 ベルリン・フィルにとってそれほど慣れているレパートリーでなかったのも大きかったと思いますが、こちらの提案や曲について思っていることをそのまま受け止めてくれた。彼らの吸収力がすごいんですよ。こういう超一流のオケになると、抵抗感といいますか、指揮者の言うことを聞いても元に戻ってしまうことがあるのですが、今回はそれがほぼなかったです。

あとは、ベルリン・フィルの音楽の推進力。ドイツのオケというと重いイメージがありますが、棒よりも先にグングン行く。以前指揮したことのあるドレスデン・シュターツカペレもそうでしたが、音が押し寄せる力というか、初日など音が突進してくる感じなんです。弦楽器は波打つし、管楽器の奏者もよく動く。「椅子から転げ落ちないの?」というほどに。いわば、オーケストラがひとつの生命体になる

決して悪い意味で対比するわけではなく、日本のオーケストラもものすごく上手くなってきているのですが、目立ってはいけないという意識が働いて、ルールとして「動かない方がいいんだ」ということになることが多いように思います。それは日本のスタイルなのかもしれないけれど、ベルリン・フィルの生命力の強さを前にすると、無理に抑える必要はないんだと思いました。生きるパワーが強い。一人ひとりがそうだし、オーケストラとしてもそう。世界最高峰と言われるのは、そんなところにもあるのでしょう。

プログラムは、レスピーギ「ローマの噴水」、武満徹「ウォーター・ドリーミング」、サン=サーンス「交響曲第3番『オルガン付き』」の3作品。コンサートマスターは、ノア・ベンディックス=バルグリー(2025年6月12日 ベルリン・フィルハーモニー )ⒸBettina Stoess