楽器はルールを持ったおもちゃ

五味 楽器ってルールありきな感じがあるけど、あとから生まれてきた子どもたちにとってはルールなんて無いんだよね。ただピアノがある。はじめからおもちゃなんだよ、世界のすべてが。

画材もまったくそうで、遊ぶ道具、素材。絵には教育はあり得ない。絵の描き方はメソッドになったらダメなんだ。

でもやっぱり、楽器はルールを持ったおもちゃなんだよね。そういう意味では、絵と音楽って近そうだけれど、本質がちょっと違うんじゃないかと最近思っている。

「66歳でチェロに出合って、俺の場合は教わるっていうのがあまり得意じゃないんで、どこまで行くのかなっていうのを実験的にやってるのが面白い」

60歳過ぎてからチェロなんてのを弾き始めたらさ、なんかいつまでも納得いかないんだよ。なんでかなと思ったら、この楽器、俺が作ったんじゃないもん! 俺だったらこんな弾きにくい弓、作らないぜ。北ヨーロッパの人間ほど手も体も大きくないし。そういう設計も含めて、歴史が背負ってきたルールを認めて、肉体化してからでないと遊べない。

さらに平均律というルールがあって、バッハなんかが練習曲みたいなのをいっぱい作っちゃって、嫌な男だね(笑)、西洋音楽の世界はエデュケーションがうまくいっちゃったんだろうな。