「幸太の部屋」誕生秘話と外出自粛生活に思うこと

©読売日本交響楽団
広島県呉市生まれ。東京芸術大学、ジュリアード音楽院に学ぶ。
1994年、ヴィエニャフスキ国際コンクール(17歳以下の部)第3位。98年、日本音楽コンクール最年少優勝。小澤征爾、岩城宏之、秋山和慶、ゲルハルト・ボッセらと共演。室内楽や各オーケストラの客演コンサートマスターとしても活躍し、アルゲリッチ国際音楽祭、宮崎国際音楽祭等にも出演。
2004年、大阪フィル首席客演コンサートマスターに就任、06年から12年まで首席コンサートマスターを務めた。
2014年10月、読売日本交響楽団コンサートマスターに就任。

——この動画を作ろうと思ったきっかけについて教えてください。

もともとSNSを使った情報発信にはまったく興味がありませんでした。機械音痴という こともありますが……(笑)

音楽というのは生き物で、何回も録り直したり技術を駆使して作り上げるCDも、僕は作りたくないタイプの人間です。僕が1枚だけ出しているCDもリサイタルのライブ録音です。

このような状況になり、生徒がレッスンに来られなくなりました。オンラインレッスンをしてほしいという生徒もいますが、デジタルを通すと、音色まで肌で感じてもらえないかな? と思い、断っていました。

でも、2ヶ月以上音楽活動から遠ざかり、生徒もオケのメンバーも元気だろうか? と思い始め、何かメッセージになることを始めようと考えました。

そこで、レッスンを受けられない学生たち、これから将来、オケのオーディションを受けようと思っている人たち、オケマンだけどコンサートがなくてモチベーションが上がらない人たち、オーケストラを聴くのが大好きだけど聴きに来れない方たち、そして単純に幸太ファンで僕が何を考えながら演奏してるのか興味がある方(笑)を対象に、僕の考えていることとその実現方法を教えて、練習の励みにになったり、モチベーション上げていただけるように! と動画を撮ることにしました。

指揮者からの視点というのも、自分の考えや、どのパートを意識して弾いているかなどがわかりやすいかな? と思っています。人と違うことをしよう! と思ったわけではないですが、結果的に面白いと感じていただけたら嬉しいです。

——YouTubeチャンネル「Musicachannel」の名前の由来は?

僕が名付け親になった西麻布にあるmusicaというバー(紹介制)のことです。「幸太の部屋」の構成と撮影は僕がしていますが、編集はmusicaのマスターが担当してくれています。

3月末にmusicaから無観客ライブを配信して、今後、大規模なコンサートが難しくなっても小さなスペースを活用する方法として模索していたのですが、無観客ライブもできなくなったときに、動画の配信をしたいとマスターに相談したら、編集を引き受けてくれました。

musicaという名前は、広島にある喫茶店、ムシカからきています。クラシックのレコードを聴くことができて、小さなステージがあるので演奏もできるお店です。戦後、原爆からの復興を目指す広島の政治家たちが、このお店に集まって会議をしていたそうです。僕も広島出身で何度か行ったことがあります(ばったり指揮者の山下一史さんと会ったこともあります)。

西麻布musicaのオーナーから名前を考えて! と言われて、真っ先にムシカが頭に浮かびました。音楽好きが集まっていろいろ話をしたり、気軽に演奏したりできる空間になってほしい、音楽を通して皆が平和を噛みしめる空間になってほしい、という思いを込めてmusicaと名付けました。

現在広島のムシカは閉店してしまいましたが、勝手に心は引き継いでいるつもりです(笑)。

緊急事態宣言発令前の3月末に西麻布ムジカで行なった無観客ライブ配信の準備をする長原さん。