今回の受賞にあたり、牛田氏は次のようにコメントしている。
このたびは日本ショパン協会賞にお選びいただきとても光栄です。昨年10月に行われた、ショパンの「ピアノ協奏曲第1番・第2番(ケヴィン・ケナー&クシシュトフ・ドンベクによるピアノ6重奏版)」の公演では、カルテット・アマービレの皆さん、コントラバスの加藤雄太さんとともにいろいろなアイデアを試し、長時間にわたるリハーサルやツアーを通してたくさんの話し合いをしながら作品に取り組みました。ときおりソロとオーケストラが分離し、典型的な古典派ヴィルトゥオーゾ協奏曲のスタイルに陥ってしまいがちなショパンの協奏曲において、すべてのパートが一体となったときに生まれる構造的・交響的な魅力に光を当てることはできないかーーそんなテーマをもって皆で試行錯誤した結果に、かぎりなく温かいこのような評価を与えていただいたことに深く感謝しております。
わたし個人としては、これまで素晴らしい音楽家の方々が紡いでこられた伝統ある賞をいただくことに大きな責任を感じると同時に、一抹の戸惑いがなかったわけではありません。こんにち日本において我々の世代がショパンや彼の作品について学び、演奏においてさまざまな挑戦ができるのは、なによりもこれまで日本ショパン協会を中心として素晴らしい先生方や諸先輩方が演奏や研究に情熱を注ぎ続けてくださったからこそであり、まさに巨人の肩に立って学び続けることの静かな重みを感じております。これからもショパンという偉大な存在に向き合い続けると同時に、いつか次の世代にも学んだものを引き継いでいけるよう、変わらぬ情熱をもって日々努めていく所存です。本当にありがとうございました。