角野隼斗は自由さと開かれた心を持っている

――日本人の生徒さんも多くいらっしゃいますね。

ルイサダ はい、彼らには感情豊かで開かれた心をもって生活することで、さらに発展してほしいと願っています。それは特別なことをしろという意味ではなく、意識して自分をオープンな状態に保ってほしいということです。

私には優秀な生徒、大好きなピアニストがたくさんいますが、なかでも角野隼斗は特別です。隼斗は自由さと開かれた心を持っています。そして常に進歩しようとしていて、しかもそれをただ練習に明け暮れるという方法ではなく、創意あふれた方法で実現しています。

例えば彼が演奏するショパンの《葬送ソナタ》(ピアノ・ソナタ第2番)は、氷のようなものを感じさせると同時に、純粋で深みがあります。技巧をひけらかすことはありません。「かてぃん」としておもしろい音楽活動もしていますが、彼にとってクラシックを演奏するうえで、それが絶対に必要なのでしょう。私には即興演奏の才能はないので、本当にすごいと思います。興味深いのは、彼がそこからショパンに戻ってくると、別人のようになることです。

隼斗にはクラシカルな感性がありますが、心は古びていないので、思い切った方法で効果的な音楽を生み出せるのです。もっとも優れた日本人ピアニストの一人だと思います。