――パンデミック中は海外で学ぶことが難しかったのですが、留学という選択をしやすい状況が戻りました。それは海外から先生が日本に来る環境も戻ったということですが、その状況をふまえたうえで、若い人が海外で勉強することは必要だと思いますか?
ルイサダ それは必要だと思いますね。例えばパリの生活を知ることは、音楽表現の助けになります。バルザック、ジョルジュ・サンド、プルーストの世界観を知るには、現代のパリでも足を運ぶ必要があります。ただ、それによって突然天才的な演奏ができるようになるわけではありませんけれど。
教師は生徒にアドバイスができますが、それで本質を変えることはできません。生徒が自分で大切なものを見つけ、感性に何かが起きたとき、ようやく成果が生まれます。音楽は自分の中から出るものでないといけません。自分の気持ちを知るために、海外で学ぶのです。
私自身はパリの自宅にいても、イタリアでスパゲティを食べていても、オーストリアの作曲家であるシューベルトをちゃんと弾くことができます。重要なのは感受性を確立することです。自分の感情を見つけ、構築しなくてはならないのです。