ルイサダ ところで私は、エコール・ノルマルの学生と毎週2本映画を見ています。それも古い作品ばかりです。アメリカ映画、フランス映画だけでなく、小津安二郎監督の『東京物語』、溝口健二監督の『山椒大夫』のような日本映画も観ます。大島渚監督も大好きです。『愛の亡霊』は名作ですね。モーツァルトの「レクイエム」を繰り返し聴くのと同じように、100回でも観ることができます。
こうして一緒に映画を観るのは、このことが彼らの感情表現の助けになればと思うからです。
例えば最近、グラナドスの《ゴイェスカス》を演奏している生徒がいました。我々はその1週間前、『東京物語』と『嵐が丘』を観ていました。
その生徒は《ゴイェスカス》をとてもロマンチックに感情的に演奏していました。そこで私は演奏を止め、少し落ちつこうといいました。
二つの映画のどちらが好きだったか尋ねると、彼女は『嵐が丘』が良かったと答えたので、私はこう言いました。
「あの映画は白黒で、冷たさ、厳しさがあるけれど、観ていると泣けてくる。あなたも自分をコントロールし、ゴイェスカスのドラマが感情にどう影響するのか、冷静に深く考えてみてほしい」
するとその後の演奏は見違えるようでした。