——トレーニングも制作も、急ピッチで進んだのですね。シンプルで上品な衣裳も素敵でした。

町田 衣裳は、アニメでペパーミント・パティが着ていたジーンズの青空色のワンピースをイメージしました。現役時代はダークなイメージの作品を踊ることが多かったので、あんなにさわやかなブルーを着たのは初めてかもしれません(笑)。

——振付で苦心されたのはどんなことでしょうか。

町田 音楽の自然な表現に集中したので、振付にはあまり迷いませんでした。取り組んでみて、口笛とフィギュアスケートの相性の良さをあらためて実感しましたね。そもそもスケートの動きは、打楽器よりも弦楽器や管楽器の「伸びる音」に合います。口笛の音は呼吸そのものに近く、すっと入って力強く伸び、やがてしぼんでいく。スケートも、着氷からぐっと氷を押すことで加速し、しばらく滑り続けて止まる。1フレーズのバイオリズムのようなものがよく合っているように思います。

「白鳥は、水面下では必死に足をバタバタさせている」といいますが、陸上のダンスは足を動かさなければ移動できません。でも、スケートならひとつのポーズで静止したまま滑り続け、どこまでも伸びていくロングトーンを表現できるのです。「音の波に乗る」感覚は、フィギュアスケートの醍醐味だと思います。

——今回の作品は、助走的なステップと、ジャンプなどの技術的な見せ場が音楽的につながっていると感じました。

町田 跳ぶことだけに集中するのではなく、助走から踏切、流れるような着氷までを1フレーズとし、音楽と呼吸を合わせて振り付けています。印象的な音と着氷のタイミングを合わせた箇所が多いですね。ジャンプを成功させるには助走でトップスピードに乗ることが大事ですが、助走を助走と見せずに加速する練習も、今回はたくさん取り入れています。

——音楽が消えていくとともに、スケーターの動きもすっと止まる……。そんな瞬間には、時間が止まるような美しさがあります。

町田 競技会では技の難易度ばかりに目がいきがちですが、易しいステップでも精度を極限まで高め、音楽に乗せれば、何度でも見たくなる表現になる。特に趣味で滑っている方々の目的は、4回転ジャンプなど高難度の技を習得するというよりも、好きな音楽を心ゆくまで身体で表現することだと思います。そういう方々にこそ、この作品を届けたい。「氷上で踊る」喜びが広まってこそ、フィギュアスケートが芸術として成熟していくのではないかと考えています。