――さらにマンクージさんは、シュトラウス・ファミリーの精神によるポルカ《回転寿司(Running Sushi)》も作曲・演奏しておられます。この作品の中では、日本文化に対するどのような考察をしておられるのでしょうか。

マンクージ このポルカには、特別なストーリーがあるんです。

ウィーンで、中国人が経営する回転寿司屋に行ったときのことです。大きなシャリの上に、味のしない小さなネタがのっていて、全然美味しくなかった。しかも、コンベアはすごいスピードで回っていて、そこから寿司を取るのはほとんど不可能でした。

そこで、この信じがたい状況を音楽にすることを思いつきました。ポルカ《回転寿司》では、中国の旋律とオーストリアの民俗音楽がとても速いテンポで組み合わされているのです。そして日本の旋律(《さくら、さくら》)が、シャリの上のネタのように、トリオのヴィオラ・パートに凝縮されている。シュールで奇妙で、とても面白いでしょう!

――ぜひともポルカ《回転寿司》もいつか日本で演奏していただきたいものです! 

ワルツは昔も今もウィーンの音楽そのもの

――ところで、ちょっと大きな質問なんですが、オペレッタの本質とは何でしょうか? ウィンナ・ワルツの本質とは何でしょうか? 一見甘くて享楽的な音楽に思えますが、とくにシュトラウス・ファミリーの作品の場合、当時の社会状況との関連が強いですし、19世紀のハプスブルク帝国がゆっくりと衰えていった時代性とも無関係ではないように思えるのですが……。

マンクージ いえいえ、私はそのようには思いません。なぜなら、ワルツはウィーン文化の特別な表現であり、ウィーンという都市と同じくらい古い歴史があるからです。オーストリアの民俗音楽のルーツは、ワルツを演奏し踊ることにあります。シューベルトは、この特別な芸術を自分の音楽に取り入れ、固有のものにすることを始めました。彼がこのようにして、ワルツを純粋な民俗芸術からコンサートピースに変えることを始めたのです。

ヨハン・シュトラウス1世とヨーゼフ・ランナーはこのアイディアを取り入れ、ワルツを人々が演奏したり踊ったりできるようなものにしました。彼らに続く作曲家たちは、私と私のワルツを含め、伝統を継承し、保持する者にすぎません。

それは、ハプスブルク帝国の衰退とはまったく関係がありません。今でも私たちウィーン人、オーストリア人はワルツを踊るのが大好きです。

バレエ・アンサンブルSOVOPウィーンは、ウィンナ・ワルツの研究と継承、および典型的なウィンナ・ダンスの保護を目的としてウィーン・フォルクスオーパーを母体に結成されたバレエ団。今回も選りすぐりの2組のペアがサントリーホールの舞台に登場し、エレガントな宮廷舞踏と、時にコミカルな演出で舞台を盛り上げてくれる ©Naoya Ikegami SUNTORY HALL