――昔も今も、ワルツはウィーンの中で生きた音楽そのものだということなんですね。ところでウィーン・フォルクスオーパーには、古き良きウィーンだけではなく、新しい現代のウィーンの要素もあると思います。それについてもご紹介いただけますか?
マンクージ 現代のウィーンを形作る要素は、他の近代都市の場合と大差ありません。新しい世代の考え方は国際的で、いわゆる“モダン”であろうとしていますが、実際は世界中の他の人々と同じであるにすぎません。このグローバルな時代において、私たちはより団結し、一方で伝統を守る義務があります。
日本人がオーストリアに来る理由は伝統があるからでしょう。日本人は、オーストリアの「古い部分」を見たいし、オーストリアの伝統を感じたいのです。そしてその逆もまた然りで、私は日本で伝統的なものをたくさん見たいと思います。今世界のどこでも見られるような、「モダン」な建物やスタイルばかりを見たいとは思いません。
このようにさまざまな問題を抱える人々の生活環境を、演出家は舞台にかけるべきだし、戯曲やオペラ、オペレッタにするべきなのです。
――ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団は、いつもサントリーホールでお客さんをとても幸せにしてくれる、ほのぼのとした歌心あふれる素敵なオーケストラだと思うのですが?
マンクージ このオーケストラはさまざまなジャンルのレパートリーを有する世界でも稀な楽団といえます。まさに音楽を楽しんで演奏し、そしてお客様を楽しませてくれるオーケストラなのです。
2021年の日本ツアーは、コロナ禍が世界中に蔓延していたため残念ながら中止になりましたが、とても悲しい気持ちでした。なぜならサントリーホールのステージに立つことは、私にとってたいへん名誉なことだからです。サントリーホールの音の響きは、本当に素晴らしく、オーケストラも歌手たちもとても気持ちよく演奏できるのです。
今回、華やかで美しいウィーンの音楽をお届けできることをとても楽しみにしています。色鮮やかな花束とともに新年を迎える喜びを、会場の皆様と分かち合うような気持ちで選曲しました。コンサートでは、曲目の紹介などを片言ではありますが、ぜひ日本語でお話ししたいと思っています!