ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団の100年を超える歴史と、オーケストラにとって特別な存在の歌手たち

最後に、ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団そのものについても補足しておこう。その創立は1917年にまでさかのぼる。当時のフォルクスオーパーは夏のシーズンは公演が休みだったため、そうしたオフの時期に劇場以外でのコンサート活動ができるようにウィーン・フォルクスオーパー交響楽団協会が作られたのである。以来、現在でもウィーン・フォルクスオーパー交響楽団の楽団員は、フォルクスオーパーの専属オーケストラの選抜メンバーで構成されている。入団するには、1年間の試用期間をパスする必要があるということだ。

また、今回の来日に同行するソプラノベアーテ・リッターは、現在シュトゥットガルト歌劇場の専属歌手。その前は長年フォルクスオーパーの歌手として活躍し、《こうもり》のアデーレ、《魔笛》の夜の女王、《ホフマン物語》のオランピアなど多くの役を演じており、「オーケストラにとって特別な存在」ということである。

メルツァード・モンタゼーリは、長年フォルクスオーパーの専属歌手として活躍中のテノールだ。オペレッタに限らず、オペラ、ミュージカルなどレパートリーは多岐にわたる。

気心の知れた歌手ふたりとの演奏は、さぞかし息のぴったり合った、劇場感覚あふれる楽しいものとなることだろう。

ベアーテ・リッター(ソプラノ)
オーストリア出身。ウィーンで声楽を学び2009年アン・デア・ウィーンで劇場デビュー。2010年から18年まで、フォルクスオーパーの専属歌手として、《魔笛》のパパゲーナや夜の女王、《ホフマン物語》のオランピア、《ナクソス島のアリアドネ》ツェルビネッタなど、コロラトゥーラ・ソプラノとして数々の役で活躍。2016年のフォルクスオーパー日本公演では《こうもり》のアデーレ役などで好演。現在は、《ラ・ボエーム》のムゼッタや《リゴレット》のジルダ、《ドン・パスクアーレ》ノリーナなどイタリア・オペラにもレパートリーを広げ、シュトゥットガルト州立歌劇場を中心に、ライン・ドイツオペラ他、ヨーロッパ、アメリカ各地の歌劇場で活躍
メルツァード・モンタゼーリ(テノール)
テヘラン生まれのオーストリア人。ウィーンのシューベルト音楽院、ウィーン国立音楽大学、ウィーン私立音楽芸術大学で学ぶ。数々のコンクールで入賞を重ね、バイロイト音楽祭で奨学生として研鑽を積んだのち、ヨーロッパを中心に世界各国の劇場や音楽祭、コンサートに出演。レパートリーは、オペラでは《コジ・ファン・トゥッテ》フェランド、《後宮からの誘拐》ペドリロ、《3つのオレンジの恋》トルファルディーノ、《魔笛》タミーノ、《魔弾の射手》マックス、《ラ・ボエーム》ロドルフォ、《蝶々夫人》ピンカートンほか多数。オペレッタでは、《ボッカチオ》ピエトロ王子、《乞食学生》シモン、《ヴェネツィアの一夜》ウルビーノ大公など。メータ指揮《後宮からの誘拐》DVD、メルビッシュ湖上音楽祭での1999年《ヴェネツィアの一夜》CD、2003年《ジュディッタ》CD・DVDの収録に参加。フォルクスオーパーには04/05シーズンにデビューし、翌シーズンから専属歌手を務めている。同楽団との日本での年末年始のコンサートでもお馴染みの顔となっている

前回の「サントリーホール ニューイヤー・コンサート2023」 ダイジェスト版

公演情報

サントリーホール ジルヴェスター・コンサート 2023

ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団

日時:2022年12月31日(土)15:00開演

会場:サントリーホール 大ホール

出演:ベアーテ・リッター(ソプラノ)、メルツァード・モンタゼーリ (テノール)、グイド・マンクージ(指揮)、ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団、バレエ・アンサンブルSOVOPウィーン 、八塩圭子(ナビゲーター)

曲目:
ニコライ:オペラ《ウィンザーの陽気な女房たち》序曲
ヨハン・シュトラウスII世:ワルツ《春の声》作品410
ヨハン・シュトラウスII世:ポルカ・シュネル《突進》作品348
ヨハン・シュトラウスII世:《入り江のワルツ》
レハール:オペレッタ《ルクセンブルク伯爵》より「可愛いお嬢さん 素敵なお嬢さん」
ヨハン・シュトラウスII世:オペレッタ《こうもり》序曲
ヨハン・シュトラウスII世:オペレッタ《こうもり》より「私の侯爵様」
カールマン:オペレッタ《悪魔の騎手》より「女王の大パロータシュ」
エドゥアルト・シュトラウス:ポルカ・シュネル《蒸気をあげて》作品70
ヨハン・シュトラウスII世:ワルツ《ウィーン気質》作品354
ほか

問合せ:サントリーホールチケットセンター 0570-55-0017(10:00~18:00、休館日を除く)

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キユーピー スペシャル

サントリーホール ニューイヤー・コンサート 2024

ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団

日時:2024年1月1日(日・祝)14:00開演

会場:サントリーホール 大ホール

出演:ベアーテ・リッター(ソプラノ)、メルツァード・モンタゼーリ (テノール)、グイド・マンクージ(指揮)、ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団、バレエ・アンサンブルSOVOPウィーン 

曲目:

13:20~ プレ・コンサート

スッペ:オペレッタ《美しきガラテア》序曲
ヨハン・シュトラウスII世:ワルツ《もろびと手をとり》作品443
エドゥアルト・シュトラウス:ポルカ・シュネル《人が笑い生きるところ》作品108
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ《パンジー》作品183
ヨハン・シュトラウスII世:オペレッタ《ジプシー男爵》より「誰が僕たちを結婚させたのか」
グイド・マンクージ:ワルツ《スタイル&エレガンス》
ヨハン・シュトラウスII世:行進曲《我らの旗のひらめくところ》作品473
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル《短いことづて》作品240
ヨハン・シュトラウスII世:オペレッタ《ヴェネツィアの一夜》より「誠実でいるなんて 趣味じゃない」
グイド・マンクージ:《新幹線ポルカ》
レハール:オペレッタ《パガニーニ》より「私ほどあなたを愛した人はいない」
ヨハン・シュトラウスII世:ワルツ《美しく青きドナウ》作品314
ほか

問合せ:サントリーホールチケットセンター 0570-55-0017(10:00~18:00、休館日を除く)

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【その他の公演】

*1月5日(金)大阪/フェスティバルホール (問)フェスティバルホール06-6231-2221

*1月6日(土)枚方市総合文化芸術センター 関西医大 大ホール (問)枚方市総合文化芸術センター072-845-4910

*1月7日(日)三重県総合文化センター 三重県文化会館 大ホール (問)東海テレビチケットセンター052-951-9104

*1月8日(月・祝)可児市文化創造センター ala 主劇場      (問)可児市文化創造センター インフォメーション0574-60-3050

林田直樹
林田直樹 音楽之友社社外メディアコーディネーター/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...