5.芸術家というしごと

音楽をいつまでも探し続け、みなさんと一緒に芸術に向き合っていきたい

――エコール・ノルマルでの勉強は、今年6月に終えられたそうですね。

M はい。フランスに自宅があり、いまは日本とダブル拠点でやっています。

――どんな演奏家を目指したいですか。

 これからも成長し続け、音楽をいつまでも探し続け、聴きに来てくださるみなさんと一緒に芸術に向き合い、一緒に楽しめるコンサートを目指していきます。

――AIの時代になり、芸術の分野まで侵食されるような状況になっていますが、芸術家として生きていくことについて、どのような考えをお持ちですか。

M 音楽、演奏の難しいところは、良いものの定義が人それぞれによって異なる、とても曖昧なものだということです。

「圧倒的な演奏」「うまい、下手」などは、かなり抽象的なもので、その場の状況次第でいくらでも変わり得るものだと思っています。演奏を聴く時など、先入観が占める要素がかなり多いです。今の世の中は、マジョリティをとったものが良いとされています。しかし、芸術はそういうものなのか、いろいろと考えています。

ここ数年で、デジタル化がかなり進みました。でも、生演奏の価値を下げてしまったこと、マイクやカメラを通してどう聞こえるか、どう見せるかが大事になってしまったことなど、良い面ばかりではないように思っています。

AIを使うことによって、音楽界がより良い方向に発展すればいいなと思っています。

――ところで、マルセルさんはピアノ以外でハマっていることってありますか?

M う~ん、いまはどうだろう?(笑)中学生のころには将棋が大好きで、詰め将棋をずっとやっていました。家に将棋盤があり、ちょっとやってみようかなと思ったのがきっかけでした。でも、夢中になりすぎて、夜に眠れなくなる日が続いてしまい、いったん引退しました(苦笑)。

田所 光之 マルセル 公演情報

リサイタル

2023年11月3日(金・祝) 14:00/ 栃木・岩舟文化会館

2024年1月6日(土) 14:00 /名古屋・ 宗次ホール

協奏曲

2024年1月18日(木) 18:45 /名古屋・しらかわホール

高関健 指揮 愛知室内オーケストラ

モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番 K.453

道下京子
道下京子 音楽評論家

2019年夏、息子が10歳を過ぎたのを機に海外へ行くのを再開。 1969年東京都大田区に生まれ、自然豊かな広島県の世羅高原で育つ。子どもの頃、ひよこ(のちにニワトリ)...