ヴァイオリンとの出会いとオペラ《カルメン》

小学校に入ると、父のオペラ公演や立ち稽古、オーケストラ合わせをよく観に行くようになりました。客席からオーケストラピットをのぞき込むと、そこが「光り輝く宝箱」に見えて仕方がなかった。なかでも、いちばんたくさん目に入るのがヴァイオリン! 子ども心に「弦と弓を擦ったらなぜあんな音が出るのか?」ということが不思議でたまらなくて。

それで、どうしてもヴァイオリンが習いたくなり、両親にやらせてほしいと頼んだら、ピアノのレッスン室が空いてる時間が少ないから練習もできないし、ピアノの練習も今やってるから大変だよと……それでも1年くらい言い続けたら、7歳のときに祖母が買ってくれたんです。

8歳のときのヴァイオリンの発表会で演奏する田代さん

ただ、ピアノは鍵盤を押せば音が出るけれど、ヴァイオリンはそうはいかないですよね。まず、「ド」という音を出すだけでもすごく難しい。音をキープしたりビブラートというピアノにはない要素があったり。自分は本当に演奏できるのか? って心配になったけど、“ピアノのあとはヴァイオリン”という稽古の日課を作って夢中で練習したんです。

そして8歳のときに、市民オペラ《カルメン》に子役で出演しました。オーディションでは童謡「ふるさと」を歌いました。舞台上の歌手たちはもちろん、オーケストラピットの中で演奏するプロの音楽家や舞台の熱気に包まれて、音楽で溢れる毎日でした。