その点、声楽は15歳から始めたばかり。声変わりも遅く、まだオペラのアリアを歌えるようにもなっていない。それで、大学はピアノかトランペットで受けたほうがいいと周囲に勧められたけれど、「声楽科」の受験を選択しました。やはり「舞台に立ちたい」という思いが強かったんです。
東京藝術大学の声楽科の受験は、1次・2次が実技(歌)、3次が副科(ピアノやソルフェージュ)。あと、センター試験も。ソルフェージュは小学生の頃から耳が鍛えられていたので、中学1年生の時点で音大受験生と同じ課題をこなせていました。声楽の実技試験では、浪人生や他の音大を卒業した成熟した大人の声を持つ受験生に囲まれて「これはかなわないな」と感じて。でも、声はまだか細くても音楽性や将来性を見込んでもらえたのか、ストレートでテノール専攻に合格することができました。