その点、声楽は15歳から始めたばかり。声変わりも遅く、まだオペラのアリアを歌えるようにもなっていない。それで、大学はピアノかトランペットで受けたほうがいいと周囲に勧められたけれど、「声楽科」の受験を選択しました。やはり「舞台に立ちたい」という思いが強かったんです。

田代万里生(たしろ・まりお)
東京藝術大学音楽学部声楽科テノール専攻卒業。埼玉県立大宮光陵高等学校音楽科声楽専攻(テノール)卒業。音楽の教員免許(中学・高校)資格を取得。絶対音感の持ち主でもある。3歳から母よりピアノを学び、7歳でヴァイオリン、13歳でトランペットを始め、15歳からテノール歌手の父より本格的に声楽を学ぶ。ピアノを三宅民規、御邊典一、川上昌裕、吉岡裕子、声楽を直野資、市原多朗、岡山廣幸、野口幸子に師事。13歳のとき、藤原歌劇団公演オペラ《マクベス》のフリーアンス王子役に抜擢。大学在学中の2003年東京室内歌劇場公演オペラ《欲望という名の電車》日本初演で本格的にオペラデビュー。その後09年『マルグリット』でミュージカルデビューを果たす。
近年の主な出演作に『イノック・アーデン』『ラブ・ネバー・ダイ』『モダン・ミリー』『カム フロム アウェイ』『アナスタシア』『マチルダ』『エリザベート』『マタ・ハリ』『マリー・アントワネット』等。第39回菊田一夫演劇賞受賞。ミュージカルデビュー15周年記念アルバム「YOU ARE HERE」発売中。7月より『キャプテン・アメイジング』出演予定。

東京藝術大学の声楽科の受験は、1次・2次が実技(歌)、3次が副科(ピアノやソルフェージュ)。あと、センター試験も。ソルフェージュは小学生の頃から耳が鍛えられていたので、中学1年生の時点で音大受験生と同じ課題をこなせていました。声楽の実技試験では、浪人生や他の音大を卒業した成熟した大人の声を持つ受験生に囲まれて「これはかなわないな」と感じて。でも、声はまだか細くても音楽性や将来性を見込んでもらえたのか、ストレートでテノール専攻に合格することができました。