「ESCOLTA」の活動で最初にぶつかった壁はマイクの使い方です。クラシックの発声は50メートル先や100メートル先をゴールにして、そこでよく聞こえるように研究するんですよ。でも、マイクって口元から10cm前後で音を拾われる。高音になると音が割れたり、子音が強すぎたり、距離や角度で音質が変わったりするので、ポップス出身のメンバーからアドバイスを受けながら試行錯誤しました。常に「揺らぎ」があるクラシックとは真逆の、ポップスや洋楽の「ビート」に慣れるのも大変でしたね。
そして、ピアノの弾き語りにも挑戦しました。クラシックは楽譜に書いてあるものから世界を無限に広げるのですが、「ESCOLTA」だと、「じゃあ、この16小節は万里生のピアノの即興でお願いね」って振られたりします。僕はピアノは3歳から弾いていたけど、クラシックのピアノソロと弾き語りや即興というのはまったく違う技術なんですよね。ピアノを弾きながら自分でビートをキープして自由に歌うことが、最初のうちはすごく難しかったですね。
「弾き語り」については、シンガー・ソング・ライターたちとの交流が心に残っています。ある晩、その一人の方の自宅で食事をしたあと、「ちょっと俺の新曲を聴いてくれよ」って言われて、僕のためだけにギターの弾き語りをしてくれたんですよ。クラシックって、オペラとかでも舞台で朗々と歌うイメージが強いから、プライベートで「誰か一人のために歌う」「誰か一人のために届ける」という発想が当時の自分にはなくて。でも、彼らにとってはそれは普通のことなんです。即興演奏や弾き語りの経験は、自分のアレンジ力や発想力を鍛えるいい機会になったし、今の舞台の仕事にも生きているなと感じます。
