人に聴かれてこそ音楽は命を持つ

千住 そこで関わったのが2000年に東芝からリリースされた『〜the most relaxing〜 feel』というアルバムです。

田代 『feel』、めちゃくちゃ流行りましたね!2や3も出て。あと同じようなヒーリング系のアルバムで『image』というのもありました。あの頃はまだ「クラシカルクロスオーバー」という言葉すら浸透していなくて、「ヒーリングミュージック」というジャンルでしたね。

千住 これは坂本龍一さんも言っていたことなんですが、当時の日本には「大人の音楽」がなかった。80年代以降、日本のポップスでは小室哲哉さんが流行っていましたが、もちろん彼の音楽は素晴らしいですけれども、いずれ大人になったときに、やっぱり趣味のいいワインのような音楽があるべきだと思って作ったのが『feel』です。大人の耳を育てるという意味があった。

田代 『feel』はいろいろなジャンルの曲が入っている、いわゆるコンピレーション・アルバムでしたね。

千住 そう。一種のカタログ・ミュージックで、大人の耳を育て、客層を増やすという狙いがあったんです。そこから今度はクラシックをポップス化する、という流れが出てきて、そうして生まれたのがESCOLTAだと思います。

田代 そういうことなのか! 全然知らなかった(笑)。

千住 僕の基本的なコンセプトは、人に聴かれる音楽を書くということ。だからエンタテインメントも入ってくる。人に聴かれない音符を書くのはかわいそうじゃないですか。音楽っていうのは人に聴かれて初めて命を持つものですから。