「芝居とは何か」を教えてくれたミュージカル

——では、お二人のミュージカル人生で、「転機」になった作品は?

塩田 僕の大きな転機になった舞台は、『ミス・サイゴン』(1992年)です。帝国劇場で約1年半、ロングランをした作品。そこで市村正親さんたちと長くご一緒して、「芝居とは何か」について薫陶を受けました。

特に市村さんから学んだのは、芝居も音楽も「間」で決まるということ。そして役者も歌手も、一番大切なのは「ブレス」だということです。「ブレス」は単なる息継ぎではなく、次の音楽や台詞を表現するための準備。そんな大切なことを学んで、ミュージカルはもっと広がるべきだと確信した作品でした。

田代 僕の転機は、二人芝居の『スリル・ミー』(2011年)ですね。演出は、栗山民也さんで、僕は舞台から観客に語りかけるストーリーテラーの役。約100分間、ほとんど舞台から降りず、「これってもはや指揮者のようだな」と、感じました。僕の呼吸や視線、わずかな動きひとつで、その場の空気が変わるんです。

実はそれまで、「テノール歌手」はいいけれど、肩書きに「俳優」と書かれると、どこか恥ずかしさを感じていました。でも、この作品との出会いで芝居の面白さを知り、「これが俳優の仕事なんだ」と実感したんです。

田代さん出演の『スリル・ミー』ダイジェスト映像