この他にもクロンベルク・アカデミーには毎週ゲストの講師がいらして、自分の基本のレッスンにプラスして、そのゲスト講師のマスタークラスを受けるという感じです。
たとえば、入学直後に室内楽のレッスンを受けたアルフレート・ブレンデル先生。あとはギドン・クレーメル先生のレッスンもすごく印象的でした。
――超大物ですね。どんな印象でしたか?
MINAMI ブレンデル先生のレッスンでは、シューベルトの「弦楽五重奏曲」ハ長調D.956(6月20日にサントリーホールでも演奏予定)を弾きました。ブレンデル先生は言葉でそんなに多くは語らないのですが、一言一言が、まるで魔法使いのようで……パッと何か言うだけで、生徒の音がコロッと変わったりとか、とにかく不思議な感覚に包まれる初めての体験でした。
クレーメル先生は優しい方で、レッスンは特殊な形でした。初めに、私たちが演奏会のように通して弾いて、休憩後に、聴講の人と先生とでディスカッションをする。その時私は、最近書かれたばかりの現代曲のコンチェルトを弾いたんですが、できる限りの準備と勉強をしても、やはり自分の世界だけで終わってしまうものなんですね。ところが演奏後のディスカッションで、クレーメル先生が、他の人の意見についてどう思ったとか、ここはこういう風に書いてあるから僕はこう思う、というようなことをたくさん言ってくださった。おかげで、自分だけの世界で終わっていた曲にさらに深みが出る、そんな体験ができるレッスンでした。

――つまり、直接的にここをこういうふうに弾いたらいいとか、そういうことではなくて、選び抜かれた若い演奏家たちに、巨匠と呼ばれるような人たちが自分たちのエッセンスを伝える。そういう特別な場所だということでしょうか。
MINAMI そうですね。ここはこう弾いたらいいよみたいなレッスンは、もうクロンベルクではない。その人を音楽家としてどう深めていくかみたいなレッスンが、どの先生に限らず多いという印象ですね。
――MINAMIさんのメインの先生はミハエラ・マルティンですけれど、オイストラフとエネスク直系のルーマニア出身の名教師です。今回は来日ツアーで一緒に演奏されますね。
MINAMI 先生は、教えられるときは一音一音にとても厳しい方ですが、演奏の特徴は、どんな曲を弾いてもあの熱さ、情熱的なお人柄が出るところだと思います。
――同じく共演されるチェロのフランス・ヘルメルソンは、スウェーデンの知る人ぞ知る名手で、今年で81歳です。
MINAMI ミハエラ先生の熱さや重さをギュッと包み込んでくれるような、大きくて、あたたかい、まろやかな音楽を持っている方です。
――今回はクロンベルクの中心的存在の一人、ヴィオラの今井信子さんとも共演されますね。
MINAMI 実はまだオーケストラでしか一緒に弾いたことがなくて、室内楽は初めてなんです。世界の巨匠ですし、共演させていただけるのはすごく楽しみです。