ミニマル・ミュージックと呼ばれる音楽の様式は、1960~70年代のアメリカで、多くの作曲家が関わることによってつくられましたが、一般的にはラ=モンテ・ヤング(1935- )、テリー・ライリー(1935-)、スティーヴ・ライヒ(1936-)、フィリップ・グラス(1937-)の4人が代表者として挙げられています。
いずれも1930年代半ば生まれのほぼ同世代の作曲家たちで、大学で音楽の専門教育を受け、12音技法(※)を学びましたが、その後、方向転換をして、それぞれ独自の「ミニマル」なスタイルをつくりあげました。
※12音技法とは…オクターブの12個の半音を平等に用いて音楽を組み立てる方法で、1920年頃にオーストリアの作曲家アルノルト・シェーンベルクなどが考案した。
まずは、ミニマル・ミュージックのルーツともいうべき初期の作品として、ラ=モンテ・ヤングの《作品1960年第7番》(1960)を見てみましょう。
楽譜にはシとファ#という5度の音程をなす2個の音だけが書かれ、「長く延ばすこと」と指示されています。たったこれだけです。どのくらい長く延ばすかは演奏者しだいなので、この2音を数時間にわたって弾き続けた例もあります。
このように、ある種実験的な試みとしてミニマル・ミュージックは始まりましたが、ひじょうに長い音を聴く体験は、聴き手の音への向き合い方を変えるきっかけになっていきます。
ラ=モンテ・ヤング《作品1960年第7番》