――若い世代では、宮田さんの教え子でもある水野優也さんにもご登場いただきました。
宮田 水野さんとは昨年12月にチェロ・クァルテットで共演しましたが、そのとき「こうしたほうがいいよ」と伝えようと思った点が一つもありませんでした。一人の音楽家として尊敬しますし、それくらい成長していて、先生と生徒というよりチェロ仲間として演奏できたのがすごくうれしかったですね。
彼がいま使っている楽器は齋藤秀雄先生の楽器で、私も以前10年ほど使わせていただいていた楽器です。だから余計に感慨深かったですね。自分の当時の音とは全然違い、もう彼の楽器の音になっているなと思いました。
――連載でも初対面のかたが何名かいらっしゃいましたが、楽器との初対面と人との初対面は、なにか似ているところはありますか?
宮田 どちらの場合も、自分はまず受け身になりますね。アンサンブルでも「自分はこういうふうに演奏するぞ」というよりは、まず相手が表現したいことをキャッチしようとします。会話でも、自分がなにを聞きたいかより自分が吸収したいという気持ちでいると、ちょっと相手に隙ができて、すっとそこに入れる。それは、すごくチェロ奏者らしいところだと思っています。
東京チェロアンサンブルのメンバーも、どちらかというと、メロディを弾きたいというよりは低音で支えて、低音から音楽を作っていくような表現方法をとります。新しくお会いしたかたや、新しく出会った楽器に対しても、チェロ族はそういうアプローチをしていくのかなと思います。