24. ストイックな印象を受けますが、そうできる原動力や秘訣は?
服部 ストイックというのは褒め言葉かもしれないけど、私はマルチタスクじゃないんですよ。すごくシングルなんです。単細胞なので、期限や自発的にやりたいことがあったら、そこだけを見ていけるところまでいくんです。もうできないってなる=止まるときみたいなところがあるから、それは私の悪いところでもあります。バランスを見ながらいろいろなことを少しずつ進めるとか、まるでできないんですよね。好き! てなったら、そこにガーッといって、もういいですってなるまでは突き進みます。なので練習も、この曲を弾けるようになるっていうのが目標だったら、弾けるようになるまで弾く。それだけです。
——途中でもうやりたくない! ってなったりしないんですか?
服部 そういうこともあります。肉体の疲れをみて、効率が悪くなってきたら一回楽器を置いて、寝ます(笑)。動物と一緒に過ごしたりして、脳みそと体力が復活してきたタイミングで、たまに音源を聴いてインスピレーションやアイデアを得て、もう一回弾くと、音が一つずつ自分の理想の状態になっていくから、それを繰り返しています。
10代の頃は、隙あらば練習するっていうのを安心材料にして、強迫観念で自分を突き動かして本番をやっていた時期もありました。そのメカニズムは長い目で見ていいことではないと気づけたので、頑張って変えました。練習の仕方、意識の持ち方、モチベーションの持ち方、全部繋がっているから、そこを変えて、白か黒ではなくてグレーを許せるようになりました。
25. これからの夢や挑戦したいことは?
服部 海外でも活動したいと思っています。コロナやウクライナ戦争があって日本にずっといたときに、日本で自分がやりたいこととできることが見えてきました。それはもう始めつつあるから、今度は、去年のショスタコーヴィチを皮切りに炙り出されて暴れ回っている自分の音に対するマニアックな欲求や探究心を追求したいです。
ブロン先生の時代をすごく懐かしく思ったのと同時に、向こうの馴染みのある人たちと、音楽のことだけを考えて話し合いながら生活する時間って、マニアックかもしれないしビジネスにならないかもしれないけど、私にとっては必要な時間だと思います。行けるうちに行けるところに行って、とことん自分のヴァイオリンを追求してみたいなと思っています。