新作《クィーン》に込めた「媚びないオンナ」

――今回の新曲は《クィーン》ですが、スペルは女王のQueenと同じですよね?

向井 スペルは一緒ですが、意味は違います。もともとは女王を指す言葉ですが、私がタイトルにつけたのは、クィアコミュニティで使われる「媚びないオンナ」のことです。この「オンナ」はカタカナで、生物学的な性別を問いません。私が書いたプログラムノートの言葉を借りるなら、「既存のジェンダー規範や社会構造に抵抗し、差別や偏見をあえて誇りに変える逆説的プライドを体現する存在」です。

たとえば、コミュニティの中では、すごくイケてるクィアな男性や女性に対して「今日、超クィーンだね」といったように、お互いをクィーンと呼び合うことがあります。媚びていないのがカッコいい、という感覚ですね。この言葉自体がエンパワーメントであり、私のキーワードでもあるので、最初にタイトルを決めました。そこから、どう現代音楽で「クィーン」たりうるかを考えました。