務川 わかる! ヨーロッパの方が、聴衆の反応も良いと言われることがありますが、僕はそれぞれの文化にそれぞれの良さがあると思っています。ときには日本の聴衆の方々の集中力に、要求の高さと熱心さをより感じますね。
田所 求められるものに多少違いがあるかな。
務川 ヨーロッパのお客さんはリラックスして聴いているよね。
田所 確かに、音楽を聴いて楽しいときって、自分も思わず歌ったりしてしまいますよね。日本で中学生のための鑑賞教室で演奏したとき、先生が「絶対静かに聴きなさい」とおっしゃっていて、それはとてもありがたいことだけれど、そこまで厳格にならなくてもいいのに……とも思います。でも、その「静けさ」から今自分が学べているので、日本とヨーロッパ両方の聴衆に恵まれているのは、幸せなことだよね。
務川 僕もそれが理想的だと思ってる。最近わかってきたことだけれど、日本では演奏家のために聴衆が集まってくださるんですね。もちろんヨーロッパでもその要素はあるけれど、有名な曲を聴きたい方もいれば、興味深い曲のために来る方もいるので、企画関係者にはプログラム、作品が大切だとよく言われます。僕を聴きに来てくださる日本の方々に、まだ知名度の高くない曲を広めていければと思っています。