——その後キャリアを重ねるなかで、転機になった作品はありますか?

加藤  『レディ・ベス』(2014年)ですね。この作品で育三郎くんと再び共演できたのですが、自分は音楽で彼には到底およばないと思ったんです。ミュージカルの歌って、作品の世界観をはずれることができないし、より繊細さを求められるし、いろいろな制約の中でやる必要があるんですけど、育三郎くんはそれを歌で表現できる。一方僕はというと、基本ロックを強く歌ってお客さんを楽しませる感じで……。

じゃあ自分が勝負するなら何だろう思ったとき、芝居だ、歌を芝居にしてしまえばいいんだと考えて。そこからより曲の世界観を出すようになりました。

ミュージカル俳優として必要なのは「探究心」

——今やミュージカルの世界になくてはならない存在になった加藤さんですが、ミュージカルの舞台の魅力は?

加藤  エンタメ要素がすべて詰まっているところですね。正直、昔はミュージカルが苦手だったんですよ。ただミュージカルと一言でいっても、今はいろんな種類がありますよね。ウエストエンドや韓国ものなど、お客さんがすごく入りやすくなっている。演じている身としては、この夢のような世界に没入してほしいし、この世界観をぜひ一度味わって欲しいなと思います。

——ちなみにミュージカルが苦手だったというのは、どんなところが?

加藤  いきなり歌うじゃないですか(笑)。そういう方は多いと思うんですよ。でもやってみてわかったんですけど、歌も芝居なんですよね。だから自分がいつも心がけているのは「歌を歌わない」ということ。矛盾しているんですけど、歌は歌いますが、あくまで役の気持ちを届ける手段であり、その前のセリフに感情がこもっていないとお客さんに届けられない。僕自身、なるべくお客さんが観て違和感がないように努力はしています。

——いま、ミュージカルの舞台は人気も高く、出演したい役者さんも多いですよね。第一線で活躍する加藤さんが思う、この世界で輝くための条件とは?

加藤  探求心じゃないですかね。井上芳雄さんや中川晃教さんなど、いろんなミュージカル俳優さんがテレビなどでも活躍していて、それぞれのスタイルを持っています。そんな中で自分のスタイルをみつけるには、いろんな舞台を観て探求しないと上にはいけないと思う。僕は観劇するのがすごく好きなんですが、上手い役者さんを見ると「この人はどうやってこの歌を歌っているんだろう?」とすぐ知りたくなります。

——今後、出演したいミュージカル作品は?

加藤  もともと『エリザベート』が好きだったので、いつか出演できたらと思います。役としては、できたらトートとルキーニが両方やりたいですね(笑)。自分は高島政宏さんが演じた、狂気を秘めたルキーニが大好きなので。

『エリザベート』といえば、15年ほど前にドラマ『ホタルノヒカリ』で武田真治さんと共演して家に遊びにいったとき、(当時『エリザベート』でトート役で出演していた)武田さんが、「いつか一緒にやれたらいいね」と言ってくださったんです。そのときは僕なんかと思いましたが、先輩に背中を押していただいて、ご縁を感じた作品でもあるんです。