——ミュージカル『カム フロム アウェイ』は、9.11の直後、飛行機でカナダの小さな町に被災した乗客と島の人々との交流を描いた、実話に基づく作品です。12人の俳優が、100人の役を次々に演じていきますが、なかでもお二人がメインで演じる、「ケビンT」と「ケビンJ」について教えてください。
浦井 僕が演じるケビンTは、環境エネルギー会社の経営者でポジティブ思考な人。万里生くん演じる秘書のケビンJとは、信頼関係もありつつ、少し違いも感じています。そんな二人が、9.11後の5日間で、互いの思考や価値観の相違が浮き彫りになり、結果的に別れるけれど、その選択は逆に彼らの未来に繋がっていくんです。というのは、実在した二人はその後、一緒にガンダー空港に行ったりもしているんですよ。ある意味、理想的な関係ですし、いろいろ考えさせられる面白い二人だなと思って務めています。
田代 僕が演じるケビンJは、Tの恋人兼秘書。秘書のわりには強気なことをいっぱい言って、Jをわざとたじろがせて楽しんでいる。
浦井 そうそう(笑)。
田代 そんな二人だけれど、ガンダーでTは状況にどんどん順応して、Jは早く島から立ち去りたいと思うようになる。9.11のときには実際、そんな方たちも大勢いただろうし、異なる価値観を持った人たちの行動が明確に表現された二人だなと思います。
——カップル役ということで、役作りについて相談はしますか?
浦井 今回は特にしてないですね。なぜならこの舞台は、世界で上演されているものを、日本でも100分間、決まった振り付けや動きで演じる作品なので。特にカップルっぽいシーンはないんです。
田代 そう、だから、恋人兼秘書っていう設定って聞いたのに、全然そういうシーンがないから、「ないの〜!?」って(笑)。
浦井 (爆笑)手もつながないもんね。
田代 実在の二人も、恋人だからというより人間愛のほうが強い気がするかな。
浦井 個々の役というより、危機に直面した時の人の優しさを12人で表して、人生ってこうだよねって伝える、奇跡的な作品だと思います。
ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』
2001年9月11日の同時多発テロ事件の直後、カナダにある小さな町に飛行機の乗客約7000人が被災した。そこで起こった驚くべき実話を基にした、トニー賞受賞のブロードウェイミュージカル。開演と同時に12名の役者が100名近くの役を次々に演じ、熱く感動的な100分間を繰り広げる。日本初演となる今回は、安蘭けい、石川禅、浦井健治、加藤和樹、咲妃みゆ、シルビア・グラブ、田代万里生、橋本さとし、濱田めぐみ、森公美子、柚希礼音、吉原光夫が出演。3月7日から日生劇場で上演される。