音楽的な背景も異なり、尊重し合う二人

——次に、お二人がプライベートで好きな音楽を教えてください。

浦井 僕はロックが好きです。僕と(加藤)和樹はロック!

田代 この前、和樹くんの車に乗せてもらったときも、絶対僕が聴かないような音楽がずっと流れていた(笑)。

浦井 万里生の車で流れている曲も、今度、和樹に聴かせたい(笑)。学生時代からロック寄りだったのもあるのか、フランク・ワイルドホーンの楽曲を歌うと周りの方にいいねと言っていただけるのは、おそらく曲の感触やカラー、喉の圧とかが合っているのかなと。ただロックといっても、以前、「女王蜂」のアヴちゃんと共演したときに歌い方を教えてもらったのですが、それまでの自分とは全く違う発声法で。だからやっぱりその時々の舞台で、自分に合ったやり方を選択することが、作品のためだなと気づいたんです。

だからこそ、万里生の歌い方や体感、どんな風に音と戯れているかを身近に感じる稽古場はすごく学びになる。自分の先生になってほしいぐらい(笑)。ミュージカルの発声はこういうふうにアタックするとか、ここで力を抜いた方がいいとか、人によってすぐに分析できると思うから。(井上)芳雄さんもそうだけど、そんな個性はいいなって思います

田代 僕は学生時代、ピアノやトランペット、ヴァイオリンもやっていたので、クラシックばかり聴いていました。そう、自分が初めて雑誌に載ったのは、「音楽の友」だったんです。17歳のときに新国立劇場でオペレッタデビューした際の劇評で、新星現ると書いていただき嬉しかったです。で、好きな作曲家はジャンルによりますけど、シンフォニーだとマーラー。高校1年生のときに「交響曲第1番《巨人》」でファーストトランペットを吹きました。

マーラー:交響曲第1番《巨人》

田代 歌曲だとシューベルト、オペラならプッチーニやヴェルディ、ピアノだと今はラヴェルとかドビュッシーとか、フランス系も結構好きです。

シューベルト『歌曲集』、ラヴェル『ピアノ曲集』

浦井 留学とか、海外で勉強はしたの?

田代 僕自身はしてないんだけど、小学生のときに父親がミラノに3年間、留学してたので、遊びに行ったりはしていたね。それから、一度はジャズをたくさん聴くようになった。クラシックは大体音楽的に先が読めることが多くて、ここが見せどころとか思いながら聴くから、没入してしまうんです。リラックスしたいときは、予測不能なジャズの音楽を選ぶかな。

浦井 クラシックの先が読めるというのは、それだけ素養があるということだと思うんですよ。ご両親がいろんなことを万里生に託したからこそだと思うし。

田代  クラシック音楽と対照的なのは、ロックには必ずビートがあること。僕はビートのある音楽をほとんど聴いてこなかった。英語圏の曲や、ビートルズやマイケル・ジャクソンも。ヨーロッパ圏の音楽に特化していました。

浦井 なるほど。

田代  それに比べると、クラシックは揺らぎと呼吸がすべてで。だから、ミュージカルも『エリザベート』とか、ヨーロッパのオペレッタから変わっていった作品には対応できるけど、アメリカのブロードウェイミュージカルになると、全部ポップだから、最初はそこに苦戦しました。