今後のミュージカル界への期待と抱負

——それではお二人が、今後のミュージカル界に期待することは?

田代 クラシック音楽は、やっぱりどうしても古いというイメージがあると思うんです。モーツァルトとか、メジャーな曲の作曲家はもう存命していないですし。その点、ミュージカルの作曲家は、まだほとんどが生きている。  アンドリュー・ロイド=ウェバー(『オペラ座の怪人』)は今もXでつぶやいてるし、ワイルドホーンもそう。なんなら僕もウェバーに連絡が取れちゃう。リーヴァイさん(『エリザベート』)も、なんなら「一緒に写メして、ブログ載せていいですか」とか言える仲になっているんです(笑)。

それはつまりミュージカルの歴史自体が、400年以上あるクラシックに比べると浅いから。帝劇は100年だけど、創生期はお芝居しかやってないし、むしろオペラをやっていた。そう考えると、まだ、日本ミュージカルの歴史は70年ぐらいと見積もってもいい。

浦井 そうなんだよね。そしてそれを引っ張ってきたのは、森公美子さんたちであって。

田代 だからミュージカルは、『オペラ座の怪人』も、『レ・ミゼラブル』も、作曲家が現在生きているし、今後、この2人を超える人が出てくる可能性がある。それに『キャッツ』より有名で、みんながやりたい作品が出てくるかもしれない。そこはクラシックに比べると、ミュージカルはまだまだ“創世記”だと思います。ただ、クラシック側も変わってきていて、日本のオリジナルオペラもたくさん作られて上演されているから、そこはミュージカル界でももっと増えると嬉しいですね。

浦井 創作のほうでは、そうだね。

田代 オペラは結構、“和もの”も多い。《夕鶴》から始まって《忠臣蔵》や《修禅寺物語》、《沈黙》とか。それなのにミュージカルはなぜ『新選組』とかをやらないのかなって。

浦井 ミュージカルは輸入ものが多いよね。

田代 やっぱり西洋もので「ベルばら」のイメージが日本にはある。だけど、ここから少し「和」に戻るというか、取り込めるミュージカル界にもなってほしいよね。その代表格が健ちゃんも出演した、『デスノート THE MUSICAL』。あの作品みたいに、現代の渋谷とかが出てくる作品を日本で作って、ブロードウェイとかで上演してほしいなって思う。

——最後に、お二人の今後の抱負をお願いします。

浦井 あっという間で、何やってきてるんだろうね? っていうぐらい(笑)。

田代 興味ないの?(笑)

浦井 いや、この仕事って常にみんなが1回1回全力で、その時々で集まって「0」から作っていくしかないからそれが楽しいし、周りを見てもみんな面白い人ばかりだから、これから何か違うことをやってもまた戻ってきたりして、ずっとこの世界にいると思う。だから、10年後とか20年後にまた集まって、面白い企画を一緒にできたらおもしろそう。学生時代の同窓会みたいに。僕たちの世代だったらできると思う。結構、好奇心旺盛な人がいっぱいいるから。

田代 あとスポーツ選手とかだと、どうしても引退があるけれど、歌手や俳優って年齢が経験値にもなるしね。

浦井 そう、“年輪”に。

田代 僕らが50、60になったときの味は、今は出せないけれど、20歳のときのきらめきとはまた違うものをまとっていると思うので、それは楽しみ。 今できないことができるようになったりすることもあるしね。

浦井 その意味で、10年後、20年後も楽しみでしかないね!

公演情報
ミュージカル『カム フロム アウェイ』

日時: 2024年3月7日(木)~29日(金)

会場: 日生劇場

劇作・脚本・音楽・作詞: アイリーン・サンコフ、デイヴィッド・ヘイン 

演出: クリストファー・アシュリー

出演: 安蘭けい、石川禅、浦井健治、加藤和樹、咲妃みゆ、シルビア・グラブ、田代万里生、橋本さとし、濱田めぐみ、森公美子、柚希礼音、吉原光夫、上條駿、栗山絵美、湊陽奈、安福毅(五十音順)

問い合わせ: ホリプロチケットセンター03-3490-4949

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取材・文
NAOMI YUMIYAMA
取材・文
NAOMI YUMIYAMA ライター、コラムニスト

大学卒業後、フランス留学を経て、『ELLE JAPAN(エル・ジャパン)』編集部に入社。 映画をメインに、カルチャー記事担当デスクとして勤務した後、2020年フリーに...