1989年と92年の2度にわたって同演奏会を指揮したクライバーの回も、ただでさえ特別の演奏会であるニューイヤーコンサート中でも、別格の存在だ。度重なるキャンセル等を引き起こし、生きながらにして伝説となっていた彼だが、とくに89年に指揮をしたポルカ・マズルカ《とんぼ》の魅力ときたら! 細かに翅を震わせて飛ぶとんぼの優美さと儚さが、わずか数分の音楽の中に凝縮され、夢のような演奏となっている。
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ《とんぼ》(1992年、カルロス・クライバー指揮)