実は今回、出演するピアニストがロシア人だということで、主催者サイドに脅迫めいたメッセージも届いていたといいます。しかしこの公演にホジャイノフさんが招かれたのは、ロシア人のコンサートをしようという趣旨のもとではなく、音楽で人をつなぐ企画で心を動かすことのできる優れた才能を招こうという意向に基づくこと。政府に与することのない、一人の音楽家としての参加です。
そんな開催に漕ぎつけるまでに起きた出来事を聞き、戦争を非難することと、人を愛し平和を求めることは、重なり合う意識に基づいていいはずなのに、だんだんとそこが乖離してゆく一部の考えの怖さも感じました。
音楽が人をつなぐという感触を改めて確かめると同時に、多くのことを考えさせられる国連でのコンサートでした。
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...