高校時代に見つけた“音楽で生きる道”

——プロを目指すようになったきっかけは何でしたか。

藤井: 高校2年生のとき、弦楽器のソロのコンクールで1位をいただいたことが転機になりました。審査員に東京藝術大学の先生がいらして、「藝大に来なさい」と声をかけられて。それで「これを仕事にできるかもしれない」と思うようになりました。

——そのまま音楽の道へ?

藤井: いえ、両親には大反対されてしまいました。「音大に行って将来はどうするんだ」と言われて。高校卒業後は地元実業団の吹奏楽団にスカウトされ、そちらで4年間演奏と仕事を両立していました。

——実業団からオーケストラへは、どのような経緯だったのでしょうか。

藤井: あるとき、オーケストラで演奏する機会があって、「オーケストラってこんなに楽しいのか」と衝撃を受けました。吹奏楽ではコントラバスの出番が少なく、譜面もシンプルで、地味な存在なんです。でもオーケストラでは繊細で目立つ場面もあって、「この世界で演奏したい」と感じました。実際、一音で空気を変えてしまうような瞬間もあり、そういうおもしろさに魅せられました。「このままじゃ後悔する」と思って、父に「会社を辞めて東京に行きたい」と伝えました。