トロンボーン奏者、マティアス・ヴィダル=ラッセル(アイダホ州ボイシ出身、NYO-USA 2024および2025に参加)©Fadi Kheir
「はじめ、NYO-USAはオールステート(全州)オーケストラ*のようなものだと思っていました。違うのは、奏者のレベルが少し高いだけだと。
より良いアンサンブルで演奏経験を積むことから学びたいと応募しましたが、合格してみると、これは単なるアンサンブルではなく、一つの経験なのだと気づきました。
音楽への、学びへの、上達への、そして新しい友情を築くことへの皆の熱意は、刺激を与えてくれます。たった4週間という短い期間で決して忘れられない繋がりができ、同世代でもっとも刺激的な音楽家たちと演奏することになりました。
最初のシーズンが終わってすぐに、もう一度応募するのが待ちきれませんでしたし、これが人生で最高の夏の一つになることはもう分かっています」
*オールステート(全州)オーケストラ:アメリカの各州にある音楽教育者協会が後援するオーケストラで、厳しいオーディションを通過した優秀な学生だけが参加できる
その実現には、費用もエネルギーも莫大であるのは容易に想像がつくが、なぜ伝説的なコンサートホールとして確立されたカーネギーホールが、そこまでコミットする必要があるのだろうか?
「私は35年前、ロンドン交響楽団(LSO)で教育プログラムを立ち上げました。芸術を担う団体として、社会全体に対して責任があると考えたからです。すべての人が音楽を楽しむ機会を持つべきなのに、現実には、多くの子どもたちがその機会を持っていません。
私がカーネギーホールに来たときも、音楽教育の取り組みはありましたが、私たちはそれを大幅に拡充しました。文化機関の責任というのは、自分たちが関わっている文化——私たちにとっては音楽——が、人類の偉大な創造物の一つであるということを認識することです。 そしてそれは、すべての人に開かれているべきなのです。
それは、今私たちが暮らしている社会のためだけでなく、音楽の未来のためにも重要なことだと思っています。私たちが音楽を届けることで、もしかしたらその中の子どもたちの何人かは、将来偉大なソリストになるかもしれません。でも、もし私たちが出会っていなければ、音楽というものを一切知らずに終わっていたかもしれない。つまり、最高レベルの才能を育てることにもつながる可能性があるんです。
そしてそうした取り組みは、将来の聴衆を育てることにもつながります。つまり、それは音楽の未来を育てていくということでもあるのです。」