しかし現在、米国の芸術支援をめぐる状況はますます厳しくなっている。地政学的にも、NYO-USAが設立された2012年と比べるまでもなく、世界はますます難しい時代になっている。
「確かに今はとても複雑な時代ですが、つねに音楽の社会における役割について前向きに捉えなければならないと考えています。もちろん、観客に素晴らしい体験を届けるとか、最高のコンサートで感動を提供するとか、そういったレベルでも語れますし、実際にカーネギーホールはそれを行なっています。
同時に、アメリカの未来にとって重要な国々に敬意を示す活動も行なっています。例えば、日本、韓国、中国、インド、アフリカ諸国です。アメリカ人がそういった国々について理解を深めることは、この21世紀においてとても重要だと考えています。つまり、音楽を通じて人々をつなぎ、異なる国々や文化を理解し合うこともまた、とても大切なことなのです」
NYO-USAがこれまで展開してきた、ロシア、中国を含むアジア地域、ラテン・アメリカ、欧州で展開してきたツアーも、まさしくこのビジョンに沿った活動だと言える。
「当初カーネギーホールの理事会には、NYO-USAは最悪のアイディアだと思っていた理事がいました。それが今では、私たちが今まで行なってきた中で最高のことだと思っているんですよ。
なぜ彼の気が変わったのか? それはまず、NYO-USAのコンサートが真に感動的だからです。そして彼らが世界各地を巡って、国のアンバサダーとしての役割を果たしているのを目の当たりにして、その重要性に気づいたのです。
WEBやラジオ放送、SNSなど、デジタル分野への取り組みで、NYO-USAのプログラムを見せたり、ユースの声を直接届けたりしたことも、インパクトを持ちました」
▼NYO-USA2024の舞台(マリン・オルソップ指揮、リムスキー=コルサコフ:シェヘラザード)