永野花穂(ながの・かほ)
スウェーデン在住ヴァイオリニスト。ヨンショーピン・シンフォニエッタ第一ヴァイオリン奏者。
新潟県出身。4歳よりヴァイオリンを始める。桐朋女子高等学校を経て、桐朋学園大学を卒業。英国王立音楽院修士課程修了。2018-2019年ロイヤルストックホルム管弦楽団アカデミー生。スウェーデン室内管弦楽団のレコーディングセッションに参加。ensembleNOVAのスプリングコンサートにソリストとして出演。
ヨンショーピン・シンフォニエッタ(JÖNKÖPINGS SINFONIETTA)

スウェーデン南部の都市、ヨンショーピンに拠点を置くオーケストラ。1988年創立。35人ほどのメンバーで構成され、小編成の室内楽からマーラーやブラームスの交響曲まで、幅広いレパートリーをもつ。

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——楽団員とのコミュニケーションは何語でされていますか?

永野 英語です。スウェーデン人の英語力は世界トップレベルで、皆さん流暢に話します。その一方で、普段英語を使ってしまうからこそ、スウェーデン語の上達に苦戦しています……。

——お国柄を感じたエピソードや、日本とは違うなぁと感じる点を教えてください。

永野 自分が誕生日の日に、ケーキを焼いてきて、同僚に振る舞う人が多いです。日本人の私としては、誕生日はお祝いされるもの、だと思っていましたが、誕生日パーティーを企画するのも自分、人を呼ぶのも自分、すべて自分主体で動くのがスウェーデン式なんだなぁと知りました。

 

ヨンショーピン・シンフォニエッタが拠点としているヨンショーピン・コンサートホール。
ホール近くの湖。
(永野さん撮影)

——これまでに一番カルチャーショックだったことはなんですか?

永野 皆さん、相手に非があるときは、はっきり自分は悪くない、あなたがこうするべきだ、と主張するところです。

例えば、いろいろな手続きや、何か知りたいことがあって会社や行政にメールをするときに、雑に扱われたり、たらい回しにされたりすることがよくあります。そんなときに、「自分にはこういった権利があるから、あなたにこれをやってほしい」ということをはっきり伝えないと、いつまでたっても問題が解決しません。

スウェーデン人はヨーロッパの中でも大人しく、比較的日本人に似ていると言われていますが、やっぱり主張するところははっきり主張するな、という印象です。

個人を尊重する過ごしやすい国

——「この国に来てよかった!」と感じるのはどんなときですか?

永野 個人を尊重するところです。スウェーデン人は、他人にあまり干渉しない印象があります。プライベートを大事にしていて、個人的な話は、その人が自分から話し始めない限り、追求しません。それが寂しいと思うときもありますが、自分が自由にやりたいことをやるには、とても過ごしやすい国だと思います。

小さなことでいうと、誰がどんな服装をしていても、すっぴんだろうとばっちり化粧をしていようと、みんなまったく気にしません。

——今のオーケストラで一番思い出に残っている演奏会や曲目を教えてください。

永野 ショスタコーヴィチの室内交響曲を、全員暗譜で演奏したコンサートです。そのプロジェクトはダンサーとのコラボレーションで、私たちの演奏に合わせてダンサーたちが踊り、また私達奏者にも少し振付があり、弾きながらステージ上を動き回る、というとても新鮮なプロジェクトでした。オーケストラの曲を暗譜で弾く、というのは普段はしません。このプロジェクトはいつもの何倍も時間をかけてリハーサルをして、詰めに詰めて本番を迎えました。

またゲストコンマス(指揮者なし)で、来てくれたテリエ・トネセンというノルウェー人ヴァイオリニストの音楽性、リーダー力が素晴らしく、大きな影響を受けました。

音楽と踊りが掛け算となって生まれた芸術に、私自身、弾きながら心を大きく揺さぶられた特別な公演となりました。

——おすすめのローカルフードがあれば教えてください。

永野 私はセムラと呼ばれるお菓子が好きです。

セムラは、スウェーデンの伝統的なお菓子です。イースター前に食べる期間限定のスイーツで、もともとは断食前の栄養食として食べられていたようです。クリームパンのようなシンプルなお菓子ですが、中に生クリームとアーモンドペーストが入っていて、カルダモンという香辛料の香りが特徴的です。

初めは、香辛料がきつくて、少し苦手だなぁと思っていたのですが、慣れてしまうと逆に癖になります。

スウェーデンのスイーツ、セムラ
(永野さん撮影)
演奏会情報
永野花穂 伊藤瑳紀DUO RECITAL

日時: 2023年7月2日(日)18:00開演

会場: サロン・テッセラ(東急三軒茶屋駅徒歩1分)

出演: 永野花穂、伊藤瑳紀(ヴァイオリン)

曲目: ルクレール/2つのヴァイオリンのためのソナタ、ペターソン・バーガー/2つのヴァイオリンのためのプレリュードとインテルメッツォ、バルトーク/《44のヴァイオリン二重奏曲》より抜粋、プロコフィエフ /2つのヴァイオリンのためのソナタ、ほか

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ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...