——お国柄を感じたエピソードや日本とは違うなぁと感じる点を教えてください。
森武 オーストリアには、白黒をはっきりつけない「オーストリア的解決法」というものがあります。双方の顔を立てて、誰も傷つかない、良い意味でなあなあな妥協点を探すのです。特に古都ウィーンではその傾向は顕著で、「物事をはっきり言うのは下品」みたいな風潮があります。京都に少し似てるかもしれませんね。
これは音楽にも当てはまり、例えばウインナーワルツの前打音なんかは、拍の前でも拍の頭でもなく、その間くらい、何処の拍にもかっちり合っていないぬるっとしたリズムで演奏します。これがとても魅力的で人間的で、すごくオーストリアらしさを感じます。ウィンナーワルツの3拍子を正三角形にしない、というのもよく知られた例かもしれませんが、3拍子の場合、デフォルメしてリズムを崩し過ぎないのが「本場」とされているようです。かっちりし過ぎないお国柄なのかもしれませんね。
例えば、ワーグナーなど長いオペラではこっそりお菓子を食べながら演奏することもあります。これにはコツがあって、まずお隣さんに勧めて罪悪感を減らし、ユーが食べるならミーもしょうがなく食べよう、みたいな共犯的雰囲気を作ってから食べるのがシキタリのようです。ベテランさんは演目ごとに良きタイミングをわきまえていて、その方が振る舞う秘密のお菓子のおかげでオーケストラの音色が再びフレッシュになります。ホントです。
——これまでに一番カルチャーショックだったことはなんですか?
森武 病気のときは演奏会を休め、と言われたことでしょうか。
また、「健康診断を受けたい」と病院に行っても、「君はすこぶる健康そうだから帰って」と追い返されたこともあります。そんなのありか、
——「この国に来てよかった!」と感じるのはどんなときですか?
森武 うちのオーケストラは大抵週末が休みなので、
——今のオーケストラで一番思い出に残っている演奏会や曲目を教えてください。
森武 ロンドンのBBCプロムスで演奏したドヴォルザークの7番がとても印象に残っています。
——おすすめのローカルフードを教えてください。
森武 ケバブ ドイツで生まれたトルコ風ストリートフード。
ゲルムクヌーデル プルーンジャム入りの蒸したパンにカスタードクリームとケシの実
シュバインス・ブラーテン 旧ハプスブルク領であったオーストリア、チェコ、
マリレン・クヌーデル・アイス アイスサロン「ティシー」の団子アイス。
バックヘンデルサラダ サラダの上に揚げた鶏肉を乗せて、
カイザーシュマーン 巨大なフライパンで作る、オーストリア式パンケーキ。南ドイツなど、旧ハプスブルク領ではよく見られます。
ツヴィーベルロストブラーテン 焼いた牛肉に赤ワインソースをかけ、カリカリにした玉ねぎを散らしていただきます。オーストリアの定番家庭料理で、日本人の口にもとってもよく合います。
カフェ「ランツマン」のチョコバナナケーキ これを食べなければ死ねない!
ザルツブルク サンクト・ペーター修道院のミルクパン ザルツブルクで700年続く超老舗のパン屋で名物の「ブリオッシュ」と呼ばれるミルクパン。