「普段弾くことが少ないバッハが弾きたくなる」

反田は以前にもパイプオルガンに触れたことがあり、その際は「迫力や音色の多彩さに驚いた」という。説明が行なわれたあとは、実際に音を鳴らす段階へと移行。ストップを操作して、近藤のアドヴァイスのもと“音作り”を行なうことになった。反田ははじめにチェロの音色を選択し、バッハの《無伴奏チェロ組曲》を演奏するなど、オルガンの音色をじっくりと楽しんだ。

近藤によれば「ルーシー」には、ストップの操作によって作った音色の組み合わせ(レジストレーション)を記憶するコンピュータのメモリーが内蔵されているとのこと。

その後もさまざまな組み合わせを試しながら、実際に楽曲の一節を演奏するなどして音色づくりを体験していったのだが、演奏曲に選ばれたのはバッハが多かった。これは意識的だったようで、「普段弾くことが少ないバッハが弾きたくなる」そうだ。

「ルーシー」の高さは約11mで見上げるような大きさ。中は4階建てになっている。低音を鳴らすと、まるで地響きが起こるような迫力に圧倒される

音の表情を生む「離鍵」の重要性

そのあとはさらにバッハ《トッカータとフーガ ニ短調 BWV565》の冒頭を使って、さまざまな音色を試しながら演奏を行なった。近藤はオルガンの特徴として、ピアノのように鍵盤の操作だけでは音色の対比や強弱がつかないことに言及。複数の声部による楽曲を演奏する際、音を強調したいときにはその音を長めに弾くなど、ピアノとは違ったアーティキュレーション(演奏の際の、音の切りかた、つなげかた)が求められる。

J.S.バッハ《トッカータとフーガ ニ短調 BWV565》

また、「離鍵(鍵盤から指を離す)」の重要性についても触れられた。これをコントロールすることで風がパイプに送られる量が変化し、音の表情を出せるという。これは足鍵盤でも同様であり、「音の減衰をしっかりと感じながら演奏する」ことが求められる。最初はピアノと違う演奏法が求められるオルガンに戸惑いを見せていた反田だったが、近藤の指導を受けながら素早い反応を見せる。

音が減衰していくのを感じながら指を離す。管楽器を吹くように弾く感覚がつかめると、上達が速いという