英国を巡る音の旅。オルガン・ソロから、打楽器とのデュオまで

――《グローリア》以外にも、多彩なプログラムが組まれていますね。

勝山 今回は、イングランド、スコットランド、アイルランドと、英国を旅するような選曲になっています。企画の出発点になったのは、私がYouTubeにアップしていた《ハイランド・カテドラル》の演奏動画を、サントリーホールの企画担当の方が見つけてくださったことでした。

▼《ハイランド・カテドラル》(勝山さんのYouTubeチャンネル「Masayo Katsuyama Organ Cafe」より)

ラグビーのスコットランド代表アンセムとしても知られるこの準国歌を、今回はトランペット4本と打楽器、オルガンという華やかな編成でお届けします。

 ――あの有名なイギリス国歌も演奏されるんですね。

勝山 はい、これは私がオルガン・ソロのために編曲しました。詰めの段階で「こういう曲もありますね」という話が出た瞬間に、私が「ぜひやらせてください!」と飛びついたんです(笑)。

やはりほんとうに素敵な曲で、オルガニスト冥利に尽きます。サントリーホールの大空間にこの荘厳なメロディを響かせられるのは、最高の快感ですね。

「イギリス国家の話が出た瞬間、『ぜひやらせてください!』と飛びつきました」(勝山)

勝山 他にオルガン・ソロの曲としては、愛知県芸術劇場が創作した絵本×朗読×オルガンのための「終わらない夜」からの抜粋があるんですが、作曲の坂本日菜さんはもともとイングランド国教会をルーツとする聖公会のコラールが身体の中にある方です。

産業革命を意識した鉄道が走るような曲や、車窓の風景、バグパイプの場面など、風景画を思わせるようなインスピレーション豊かな音楽です。

 ――オルガンと打楽器のデュオという編成もありますね。

勝山 アイルランドの音楽舞踊ショー『リバーダンス』の中のもっとも有名な曲《ファイヤーダンス》の編曲版ですね。オルガンと打楽器のデュオは、意外に思われるかもしれませんが、実はよくやる組み合わせなんです。

オルガンは巨大なトラックを運転するような楽器で、鋭いリズムを出すのは少し苦手。そこに、スーパーパーカッショニストと私たちがいつも呼んでいる名手の服部恵さんが、踊るようなリズムを加えてくださる。

音量では負けない楽器同士なので、完全に対等な立場で音楽を創り上げていくスリルが面白いんです。

「オルガンと打楽器は、実はよくやる組み合わせなんです」(勝山)