ラヴェルとプロコフィエフが書いた左手のピアノ協奏曲の傑作

モーリス・ラヴェル(左)とセルゲイ・プロコフィエフ

彼のために書かれた楽曲の中でも特別に有名なのが、ラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」だろう。ご存知の通り、ラヴェルといえば理知的な印象が強い作曲家だ。しかしこの曲に限っては、珍しく感情がむき出しになっており、心の奥底から湧き上がる英雄的な要素が描かれている。巨大なオーケストラに、片手で決闘をいどむといった趣の楽曲である。ラヴェルの数ある名曲の中でも、間違いなくもっとも優れた曲の一つだと言い切れる。

ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」

しかし実は、プロコフィエフによる左手のためのピアノ協奏曲、ピアノ協奏曲第4は、さらにその上をいくような、壮大なスケールで書かれている。いつの時代でも、プロコフィエフの最高のピアノ協奏曲はと問えば「第3番」と返ってくるだろう。初演時から圧倒的な人気がある。しかし、この第4番はその第3番のテイストを残しつつも、次の時代に書かれる《ロメオとジュリエット》のような豊かな情景描写を感じさせる楽曲になっている。非常にバランスが良い。

しかし演奏者に恵まれなかったために、随分と長い間眠っており、作曲から25年後にようやく初演された。プロコフィエフはこの協奏曲をなんとか世に出そうと、両手編曲版の構想までねったほどだ。私の知り合いの作曲家仲間には、この曲をベストにあげる者も多くいる。知らない方はぜひ聴いて欲しい。

プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第4」(トラック2~5)