ポリーニのピアニズム 3つの特徴

ポリーニは20世紀中盤から世界最高のピアニストの称号を手にした。その時すでに彼にはある種の使命感があったと思える。だから1960年ショパン国際ピアノコンクールに優勝後すぐには国際的な演奏活動に入らず、約10年にわたる研鑽を積んだのだ。

ショパン国際ピアノコンクールに優勝した際にアルトゥール・ルービンシュタインが発した「審査員の中で彼より上手く弾けるものがいるだろうか」との賛辞にして名言。自由で幸福感に満ちたピアニズム、演奏家の心根を作品で表現するピアニストが発した言葉は、新感覚のピアニストの誕生を宣言する言葉でもあった。

新世代のピアニストとして出てきたポリーニの演奏の特徴は何か。それは、①作品構造の強固さ、②強固な構造を作る音色の選好ないしは追及、③響きまでコントロールされた音と作品のダイナミックな構築的空間美にある。したがって、3つの観点に合致し、様式感のある作品でポリーニのピアニズムは凄みを増す。

ベートーヴェン、ブラームス、リスト、ショパンはもちろんのこと、20世紀以降の音楽ではシェーンベルク、ウェーベルン、ノーノ、シュトゥックハウゼン、ブーレーズ、シャリーノがレパートリーになるのは必然なのだ。

おすすめディスク 2:ストラヴィンスキー「《ペトルーシュカ》からの3楽章」、プロコフィエフ「ピアノ・ソナタ第7番」、ウェーベルン「ピアノのための変奏曲」、ブーレーズ「第2ソナタ」

ショパン「練習曲集」に並び立つ、1970年代のポリーニを代表する名録音。いずれの作品も禁欲的な姿勢で作品の実像を提示するピアノ演奏なるも、作品の実像に迫る行為が極度に、鋭利なまで研ぎ澄まされていくほど、演奏家ポリーニの凄みに帰着する。畏怖すら感じさせる名演。